夜の樹



夜の上に

一本の樹が立っている

樹は眺める

地上を

この世のすべてを

眺めながら

樹は物思いに沈む

樹は考える

どうして地上には

幸福がないのだろうか?

それもそのはず

なぜなら幸福は

樹そのものだから

そこへ星が落ちてきて

樹の心臓を貫く

心臓を貫くと同時に

星は樹のすべてを奪っていく

今や幸福は星にある

星は幸福の種子になる

星は一段と輝く

星は一段と落ちていく

夜の上の

樹は死んだ

星は落ちつづける

星は輝きつづける

あらゆる人々がそれを見ていた

全世界がそれを見ていた

イースター島のモアイ像も

両眼を開いてそれを見ていた

星はそのまま

地平の彼方まで

はるか遠くに落ちていった

このことについては

世界中の国民の意見が

平和的に一致しそうに思われる

すなわち

夜の上の

樹は死んだ

星は落ちた

そして人々が付け足すには

それははるか遠くに落ちたのだ


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