短編

那住錆

牛乳

 「残念ながら、俺は英雄にはなれそうにない」


 男は幼少期の自分に語りかける。少年は、英雄に憧れていた。

少年をクラスメイトが取り囲んで中傷した。少年が憧れた英雄は、世間からは悪だと言われている人物。世界の為に犠牲になるたった一人、沢山殺しそして自分も死ぬ。少年は混乱し反論したが彼らが、寄り添うことは無かった。


 兄は少年に諭す。少年は誓った。

信念は他者が介入することを許さない。揺らぐのであれば、最早信念では無いのだから。

 

 薄明が星たちの微睡みを消し去りに来る時間。ベット脇のサイドボードから水滴が等間隔に落ちる音がする。水溜りが出来た床は、嘲笑う。

 


 男は女の髪を一房すくい口づけを落とす。男は誓う。

もはや今の目的を達成するには、決して自分を犠牲にするわけにはいかないのだから。

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