第281話

 イザベラとクララに教皇に関する衝撃的な情報を伝えた後に、慎重に様子を見ながら、マルグリットとナタリーにも教皇の衝撃的な情報を伝えた。衝撃的な情報を伝えられたマルグリットとナタリーは、イザベラやクララと同じ様にもの凄く驚いて、暫くの間受け入れる事が出来ずに呆然としていた。転生者である俺たちと違い、この世界の価値観が強い二人には、早々に受け入れる事は難しかっただろう。

 しかしアモル神の読み通り、時間は少しかかったが、マルグリットとナタリーは情報を整理して受け入れた。そして、二人は情報を受けいれてから直ぐに、俺とアモル神に次々と質問を投げかけてきた。次々と投げかけられる質問一つ一つを、俺とアモル神は丁寧に分かりやすく返答していき、マルグリットとナタリーが満足するまで続けた。


(マルグリットもナタリーも、普段からこの世界と違う価値観の俺たちと一緒にいるから、衝撃的な情報とはいえ受け入れやすかったんだろうな)


 マルグリットとナタリーの次に衝撃的な情報を伝えるのは、アモル神と相談した予定通りにカノッサ公爵夫妻だ。だがカノッサ公爵夫妻に情報を伝える際に、カノッサ公爵家の屋敷に来客が訪れた。それが、ラインハルト王弟殿下とレギアス殿下だった。二人とも婚約式が終わった段階で、副都レゼルホルンに帰還したと思っていたが、どうやらまだ王都に留まっていた様だ。

 ラインハルト王弟殿下もレギアス殿下も忙しい方なので、再び王都まで来てもらうのが次は何時になるのか分からない。そう思った俺は、カノッサ公爵夫妻に情報を伝える場に二人を同席させて、四人一緒に教皇の衝撃的な情報を伝える事にしようとアモル神に提案した。


「少し精神的な部分が不安要素ではありますが、ラインハルトとレギアスの事を考えるのなら、ウォルターの提案が二人にとっても最善でしょう」

「では……」

「ええ。四人一緒に情報を伝えましょうか」


 アモル神の許可を得たので、ラインハルト王弟殿下とレギアス殿下にも声を掛け、カノッサ公爵夫妻と共にアモル神が生み出した空間に来てもらった。そして、俺とアモル神の口から教皇の衝撃的な情報を伝えた。

 伝えられた衝撃的な情報に、四人共イザベラたちと同じ様に驚いた後に、強烈なまでの怒りの感情を全身から放つ。カノッサ公爵夫妻、ラインハルト王弟殿下にレギアス殿下は、教皇と直接面識があるからな。知っている相手が外道に落ちたと聞けば、誰であってもその相手に対して怒りを覚えるだろう。しかも今回の場合、国全体で信仰しているアモル教のトップである教皇なのだから、より怒りの度合いが大きいのだろう。

 四人共情報を受け入れるのに時間が掛かり、精神的に不安定になってしまうかと危惧きぐしていたが、爆発寸前の怒りの感情によってそんなもの吹き飛んでしまった様だ。四人の凄まじい怒りの様子を見て、予想外の光景に俺とアモル神は思わず顔を見合わせてしまう。しかし、これは良い意味での予想外だったので、俺とアモル神は何も言う事なくそのままにしておく。

 怒りが収まり少し落ち着いてきた四人に、イザベラたちにしたのと同じ様に、今後の事について色々と語っていく。ここはしっかりと聞いておいてほしかったので、より真剣な雰囲気で語る事で、四人の冷静な部分を強く表に出てくる様にする。俺とアモル神の表情と雰囲気で察した四人は、公人としての自分を強く意識して話を聞き続けてくれたので、内心でホッと息を吐いて一安心に終わった。


(次はジャック爺とローザさん、それからカトリーヌに情報を伝える番だ)


 カトリーヌに関しては大丈夫だろうが、ジャック爺とローザさんがどうなるか分からない。四人と同じ様に、怒りで色々と吹っ飛ばしてくれるといいんだが……。後は、実際に教皇の衝撃的な情報を伝えた時にジャック爺たちがどう反応するかで、アモル神と対応の仕方を変えていこう。

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