第276話
誓いの言葉を互いに伝え終わり、教会内ではお喋りを中心にした交流会が始まっている。参加しているメンバーは、ベルナール公爵家の派閥に属している貴族たちのみだ。嫌がらせされないために参加していた中立派の貴族たちは、誓いの言葉が終わり無礼講のお喋りが始まったのを見計らって、上手く教会から脱出して姿を消していた。
自分たちの輝かしい未来を思い描いて上機嫌なベルナール派の貴族たちは、そんな貴族たちが逃げた事にも気付くことなく、呑気に仲間たちと酒を
『ウォルター』
『アモル様?お久ぶりですね。一体どうされたんですか?』
ここ暫くの間、他の神々と忙しく連絡を取り合っていたアモル神が、久々に俺に声を掛けてきた。アモル神と縁深いクララとは、短くとも毎日一度は会話をしている様だが、流石に俺たち全員と話す時間までは取れていなかったのだ。なので、アモル神とこうして話すのは久々となる。
『勇者の血を引いている、新たな末裔が二人いる様でしたから。それに丁度良く他の者の目がないので、こちらに顔を出す事に決めました』
『では、二人に直接挨拶を?』
『はい。分霊体ではありますが、この場に
『暗き闇たちに存在を感じ取られる事は?』
『その辺については、私で対応しますので安心してください』
『分かりました』
『――――では、顕現します』
アモル神はそう言うと、意識と魔力を自身の魔力を宿している帯に集中させる。そして、その神々しい姿を俺の隣に顕現させる。分霊体とはいえ、その存在感の強さは本体と一切遜色なく感じられる程に強大であり、自然と膝を付いて頭を下げそうになってしまう。
顕現した分霊体のアモル神は、突然の出来事に驚いているラインハルト王弟殿下とレギアス殿下に、優しく温かい微笑みを向ける。微笑みを向けられた二人は暫く呆然としていたが、ふと我に返ると隣に立っている俺に視線を向けてくる。どういう事なのか、突然現れた
「こちらは、アイオリス王国が信仰する愛の神であるアモル様です」
『――――は?』
「驚くのは分かりますし、直ぐに飲み込んでもらえるとも思っていませんが、これは紛れもなく真実で現実です」
「今目の前に存在している女性が……」
「……我々が信仰している愛の神」
「そうです」
「初めまして、勇者の血を引きし末裔たちよ。私は、かつて勇者と共に戦った聖女ジャンヌに力を授けた、愛を司る女神アモル。今回、貴方たちに顔見せをする為に、分霊体ではありますが顕現しました」
『………………』
ラインハルト王弟殿下もレギアス殿下も、目の前に突然現れた女性が愛の神アモルである事を告げられ、情報が処理出来ずに言葉を失ってしまった。
俺たちが二人と同じ立場や状況なら、確実に同じ様に固まってしまうのは間違いないので、二人が落ち着くのをアモル神と共にゆっくりと待ち続けた。
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