第251話

 友人たちが楽しみ始めたのを見て安心した俺たちも、商店や仕立て屋に並べられた商品を見ていく事にする。イザベラたちと一緒に、臨時の仕立て屋となっているテントの中に入り、色々なデザインの服を手にとって見ていく。並べられているのは、色々なデザインや形をしている、綺麗なタイプだったり可愛いタイプの女性用ドレス。そして、シンプルでいながら洗練されている、スマートでカッコいい男性用スーツだ。

 ドレスについては、当然ながらこの世界に元々存在する物だが、そのデザインや形については違う。イザベラやクララの前世の知識や経験を基にして、現代のドレスへと一気にブラッシュアップしていき、全く新しいドレスへと生まれ変わらせた。

 そして、今回カノッサ公爵領以外での初お披露目となるのが、貴族服でも騎士服でもない男性用のスーツとなる。カジュアルなものからビジネススーツまで、多種多様な種類のスーツが取り揃えられており、様々な場面で使い分けられる事が出来るだろう。これらの多種多様なスーツたちは、イザベラやクララと協力した事で生み出された、男性目線からの意見で作られた商品第一号だ。


(この世界に転生して、貴族服や騎士服にも大分慣れた。けどやっぱり、シンプルでいて洗練されている、スマートでカッコいいスーツはまた違うな)


 この思いは、前世の記憶がある事が影響しているからなのかは分からない。だけど中二病をこじらせてもいた俺にとっては、スーツというのは紳士しんしの、男性にとっての一種の戦闘服だという気持ちが強い。今身に纏っている騎士服も中二心ちゅうにごころをくすぐられ、凄くカッコいい服であるという思いはあるが、スーツもまた同じくらいカッコいい服であると思っている。

 今回のお披露目には、スーツとは別にさらにもう一つの商品がある。それが、男性用スーツに合わせて作られた、様々なデザインや形をしているトレンチコートだ。そしてトレンチコートについては、現在男性用のみとなってしまっているが、順次女性用のトレンチコートも作られる予定となっている。

 女性用のトレンチコートも作ろうと提案したのは、実は俺の方からだ。イザベラたちは、ドレスやアクセサリー類の方にまだ力を入れたいと考えていた。だが二人を説得する為に毎日熱弁した事もあり、最終的にイザベラとクララの方が、俺の熱意に負けてくれた形で先にれてくれた。

 俺が女性様のトレンチコートを作りたいと熱弁したのは、可愛い服やアクセサリーだけでなく、綺麗でカッコいいファッションも広めてほしいという思いからだ。マルグリットの様な、綺麗系の顔立ちをした女性たちにトレンチコートを着てもらい、女性も男性の様なスマートでカッコいい服装を着こなしてもいいという考えを、この国に流行らせようという個人的な計画だ。


(可愛らしい服を身に纏っている女性も素敵だが、クールでカッコいい男装をしている女性も素敵だと、俺の短かった前世で学んだ事の一つだ)


 中二病の影響もあったが、男装女子は素晴らしいものなんだ。イザベラたちにも、可愛い服だけでなくカッコいい服も着てもらいたい。可愛いくて素敵な女性という一面だけでなく、凛としたカッコいい女性としての一面も見てみたいのだ。そしてそんなイザベラたちの姿を見て、他の女性たちも一歩踏み出してくれる事を願っている。

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