第249話
今日は何時もと違い、カノッサ公爵夫妻のみならず、使用人たちも何処かソワソワとして浮かれている。それもそのはずで、今日はカノッサ公爵領から商人さんと仕立て屋さんが、王都のカノッサ公爵家の屋敷に訪れる事になっているからだ。
そして、何時ものカノッサ公爵家の屋敷との違いがもう一つある。それは何かというと、屋敷の広い庭に魔法学院の学生たちで溢れており、とても賑やかな声が響いているという点だ。商人さんや仕立て屋さんが王都に訪れるというイベントを通じて、派閥に属している生徒たちとの交流を深めるという事を考え、友人たちをカノッサ公爵家の屋敷に招待した。
庭にいる友人たちには、当然ながら貴族の子もいれば平民の子もいる。今回はお誘いには、平民の友人たちだけでなく、貴族の友人たちも緊張した様子でいた。なんせ、貴族の頂点たる公爵家の屋敷に招待されるなんて、どんな貴族家であっても早々ある事じゃないからな。
「もうちょっと段階を踏んだ方が良かったかもな」
「でも今回の機会を逃すと、次の機会は何時になるのかは分からないわ」
「そんなになの?」
「クララと一緒に改革してきて、そこにウォルターの男性からの貴重な意見によって、男性面においても改革が進んだの」
「その影響はもの凄く大きくて、カノッサ公爵領内だけじゃなくて、他の領からも人が訪れる様になってるのよ。それに対応する為に急いで人員を追加したけど、一から教育しなきゃいけない事もあるから、カノッサ公爵領を離れて
「そう言う事もあって、皆には急な事になって申し訳ないけど、今回の機会に合わせて屋敷に招待させてもらったという訳なの」
「なる程。そういった事情なら、急な招待になってもしょうがないか」
イザベラとクララが同じ転生者である事が判明し、公爵領における生活基準や文化の発展の為に協力関係となり、少なくない時間が経っている。あの合同訓練の時の焼肉のタレから始まり、男性目線からの様々な意見を二人に伝えてきた。
その意見が役に立った様で、カノッサ公爵領に男性向けの商品を売る店が増え、それなりに利益を上げているという報告を聞いている。特に焼肉のタレに関しては、二人と知り合って直ぐに教えた最初の協力だったが、暫くの時が経った現在においても、カノッサ公爵領で
「今日は仕立て屋さんも訪れるって事は、皆にも公爵領で仕立てた服を?」
「ええ、そうよ」
「公爵領で仕立ててる服が、社交界でも少しずつ話題になってきているの」
「私たちも社交の場に出る可能性もあるので、最新のものを最低でも二着くらいは屋敷に置いておきたいんです」
「皆には色々とお世話になったので、その恩返しの為に今日は服を贈ろうと思いまして」
「女性冒険者の間でも噂になってるし、公爵領の服を一着でも持ってれば、彼女たちも周りから何かを言われる事はないわ」
仲の良い友人たちが、噂になっているカノッサ公爵家で仕立てられた服を一着でも持っていれば、敵対する周囲の者たちから何かを言われることはないだろう。さらに今回は、仕立て屋さんが男性向けの服も色々と持ってきているとの事なので、カノッサ公爵を含めた屋敷の男性陣たちも、興味津々で商人さんと仕立て屋さんが到着するのを待っているのだ。
色々な事をイザベラたちと話していると、使用人たちや屋敷全体の雰囲気が少しだけざわつく。今日に限っては、これだけで何が起こったのがよく分かる。カノッサ公爵領から王都に向かっていた商人さんと仕立て屋さんが、長い旅路を全員無事に終えて、この王都にあるカノッサ公爵家の屋敷に到着したのだ。
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