第247話
「ジャック様もローザ様も、そんな事を……」
婚約式が無事終わり、興奮冷めやらぬ中で迎えた静かな夜。カノッサ公爵家の屋敷の広い一室の、大きなベットの上で皆でのんびりしながら、ジャック爺とローザさんとの会話の
「で、でも確かに、お二人にも私たちの子らを抱いて……ほしい……です」
「そ、そうよね。私たち、お二人にはもの凄くお世話になってるもの」
「ウォルターとの……子供…………」
「私たちの元に生まれてきてくれる子なら、女の子ならとっても可愛くて、男の子ならとってもカッコいい子になるわ。女の子ならローザ様に、男の子ならジャック様に、それぞれ名付けもしてもらいたいわね。その為にも…………」
カトリーヌさんが、頬を染めながらも艶のある声でそう言い、そっと俺の傍に寄り添ってくる。それを見たイザベラたちも、頬を赤く染めながら、カトリーヌと同じく俺の傍に寄り添ってくる。カトリーヌもイザベラたちも、妖艶な雰囲気を身体全体から放ち、俺を男性として誘惑してくる。カトリーヌが最後に言おうとしたのは、その為にも早く私たちの子供を作りましょう、という言葉なのだろう。だがその前に、俺と家族となる愛しいイザベラたちに、一つの贈り物を送らなければならない。
「皆、情熱的な夜を迎える前に、俺に少しだけ時間をくれ」
『?』
「今日という素晴らしい日を迎える時に、愛する皆に送るべきものだよ」
部屋の中に置いてあるバックパックから、木製の小箱を五つ取り出す。イザベラたちは、俺が取り出した五つの木製の小箱を見て、一体それはなんなの?といった感じでいる。そんなイザベラたちに向けて、優しく微笑んで返しながら、木製の木箱の一つをパカリと開ける。
「そ、それは……指輪?」
「ええ、イザベラたちに送る結婚指輪です」
「でも婚約式の時にも、指輪を付けてくれましたよね?」
「あの指輪は、この指輪が間に合わなかった時の為に用意した、婚約式のための指輪なんだ。そしてそれとは別に、皆に内緒にしていたけど、ローザさんに指輪の制作をお願いしていたんだ。それもただの指輪じゃなくて、当代‟ナターシャ”の技術の
「指輪の……魔道具」
「それもローザ様の技術の粋を集めた魔道具となれば、アウレリア家の身内くらいしか手に入らない代物よ。しかも指輪型の魔道具となれば、さらに手に入れる事が難しい、超希少な魔道具になるわ」
「ローザさんも、カトリーヌさんたちのために時間をかけて完璧に作りたいって事で、婚約式が終わってからも最終調整を続けてくれていました。そして夕方の夕食前に、ようやく完成したと届けてくださいました」
夕食の前に、ローザさん本人が屋敷に訪れて、直接五つの木製の木箱を手渡してくれた。その時、ローザさんの顔には自信満々の笑みが浮かんでいた。
「皆、左手を出してくれ」
『はい』
イザベラたちは婚約指輪を外して、ゆっくりと左手を俺に向けてくれる。木製の木箱を一つ一つ丁寧に開けて、イザベラたちの左手薬指に優しくつけていく。イザベラたちは、薬指に付けられた指輪をジッと見つめた後に、右手でゆっくりと大切に撫でていく。皆喜んでくれている様で、俺としてもほっと一安心だ。
そんな風に安心していたら、イザベラたちが指輪から視線を外し、連携しながら女豹の様に襲い掛かってきた。次々と襲い掛かってくる女豹たちを返り討ちにしながら、今日という晴れの日の最後の時間、情熱的な夜を
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