第244話
婚約式での誓いの言葉を終えた俺たちは、それぞれ男性と女性に分かれて、婚約式に来てくれている派閥の者たちと交流していく。俺は貴族家の当主たちと、イザベラたちはその夫人や娘たちと、和やかに楽しく談笑する。話題は主に、イザベラやクララについてだ。
婚約式に招待されている派閥の貴族たちは、カノッサ公爵家と長きに亘って家同士の交流があり、カノッサ公爵家と苦楽を共にしてきた家々だ。そのため関係は非常に良好で、それぞれの家同士に血の繋がりはないが、本当の一族の様に仲が良く
そして派閥に属している貴族たちは、そんな可愛いイザベラの友人となったクララや、義理の妹となったマルグリット、ナタリーやカトリーヌの事も好意を持って接してくれている。イザベラの友人であるからという事だけでなく、しっかりと一人一人の事を知って、一個人としてナタリーたちの事を見てくれている。
「いいかい、ウォルター君。長きに亘って夫婦が円満でいる為のコツは、上手く妻の尻に
「夫婦というのは、妻と夫が対等な立場だ。喧嘩になる事もあるだろうが、しっかり理性的に話し合わなければいけない。どちらがどちらかを従わせるというのは、いずれ夫婦の
「だが、夫だけが仕事をする訳ではない。妻は家を守り、家族を守り、夫や家族が当たり前に生活が出来る様に毎日苦心してくれている。その
「社交界においてもそうだな。社交界は女性の戦場であり、女性が主役となって演じられる一つの劇だ。その劇において、何時もとは逆となって夫は妻を支え、妻がその劇を楽しめる様にするんだ」
「分かりました」
爵位に関係なく、長年貴族家の当主として、夫として父親として生きてきた先輩たちが、夫婦生活に関して様々なアドバイスをしてくれる。その中でも少し驚いたのは、男尊女卑の傾向が強いこの国において、ここにいる男性陣が女性の事を対等に見ているという事だ。
思い切って色々と話を聞いてみると、アンナ公爵夫人の存在が大きい様だ。魔法学院在学中からその優れた才が広く学生たちに知られており、さらには当時の次期カノッサ公爵であった、現カノッサ公爵との婚約と社交界においても有名だった。そんな彼女に初めて会った時、この場にいる貴族家の当主たちは、正直にいって女だからと完全に下に見ていた様だ。
そんな状態をものともせず、仕事に向かうカノッサ公爵の代理を見事に務め上げ、派閥の貴族たちの女性に対する認識を改めさせた。正に、女傑と言っていいだろう。そんなアンナ公爵夫人に男性陣は素直に謝罪し、今までの自らの態度を百八十度改めた。そして自分たちの妻や娘、使用人たちに至るまで
派閥の貴族たちは、領地の運営が上手く回る様になった事もあるが、妻や娘たち家族との絆が深まった事や、使用人たちとの関係が良好になった事が嬉しかったという。今までの生活が百八十度変わった事で生活に張り合いが出て、より一日一日が楽しくなっていったと語る。そこから家族関係などで悩んだ時には、妻や娘と共にカノッサ公爵家の屋敷に足を運び、アンナ公爵夫人に一番に相談する様になったそうだ。
「イザベラお嬢さんたちと何かあったら、一番にアンナ様に相談しなさい。アンナ様ならば、双方の意見をしっかりと聞いて、役に立つ助言をしてくださる。だから、安心して心の内を明かしなさい」
「はい、分かりました。先輩方、ご助言ありがとうございます」
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