第25話
「じゃあ早速で申し訳ないんだけど、ウォルターさんに聞きたい事があるんだけどいい?」
「え、俺ですか?」
「男性からの視点での意見が聞きたいのよ」
「ああ、そう言う事ですか」
会議が始まって早々、いきなり俺に聞きたい事があると言われてしまい、突然の事に少し驚いてしまった。だが理由を聞けば納得だ。アルベルト殿下や側近たちは全員男性だ。だから同じ男性から、何かに対しての意見を聞きたいのだろう。
「それじゃあまずは、男性は女性の行動や仕草をどの様に見るのかを教えてくれますか?」
「う~んと、そうですね。まず簡単な例えを一つ出すとするなら、挨拶をするのかしないのかですかね」
「挨拶ですか?」
「そうです。自分と同じクラスの同級生で、とても可愛らしい女性や綺麗な女性がいるとします。そういった女性たちが、笑顔を浮かべて教室に入り友達と挨拶を交わすのと、真顔で教室に入り誰とも言葉を交わさずに静かに席に着くのでは、大分その女性の印象は変わると思います。ああ、間違えてもらいたくないのは、真顔で教室に入る事も静かに席に着く事も、悪い事であると言っている訳じゃありません。ただ、可愛らしい女性や綺麗な女性たちは目立ちます。つまり、注目を集めやすいという事です」
俺の説明に思う所があるのか、マルグリット嬢とナタリー嬢だけでなく、イザベラ嬢やクララ嬢も何かを考えている。そんな四人をひとまずそのままに、俺は続きを話していく。
「そう言った注目を集めやすい女性にとって、周囲の人々が普段から抱く印象は、非常に大事なものになると一人の男性としては思いますね。今回の場合で言えば、マルグリット嬢が嫌がらせをしているとローラ嬢が追及していますが、マルグリット嬢に良い印象を抱いている女子生徒たちはそれを信じていません」
「はい、皆さんローラのいう事を真に受ける事なく、私が嫌がらせなどしていないと信じてくれています」
マルグリット嬢は、自分を信じてくれている女子生徒たちを思い出したのか、顔が自然と笑みに変わる。
「ですが気を付けないといけないのが、普段交流がない男子生徒たちです。男子生徒たちはマルグリット嬢と交流がないので、マルグリット嬢がどういった人であるかを知りません。ですので、このまま事態が深刻なものになっていくと、流される噂を真に受ける人も出てくるでしょうし、心無い言葉を浴びせてくる事もあるでしょう」
「そういった方々に対して、一体どうすればいいのでしょうか」
「切り捨てましょう」
「え?…………つまり、男子生徒を味方につける事はしないと?」
「そうです、そういった意味で間違いありません」
ハッキリと断言した俺に、四人共驚いた顔をする。イザベラ嬢やクララ嬢は、俺が男子生徒を味方につけるようにと、マルグリット嬢やナタリー嬢に進言すると予想していたかもな。
「理由を聞いても?」
「まず第一に、これは男性目線から見ると女の戦いに見えるからです」
「女の戦い?」
「普段から交流があり、良い印象を抱いている女子生徒たちからしてみれば、マルグリット嬢がアルベルト殿下に恋愛感情がなく、政略結婚のための婚約であると理解しています。ですが……」
「なる程。普段交流がない男子生徒たちからしてみれば、婚約者である殿下をナタリーさんに奪われそうになり、その事に怒った私がナタリーさんに嫌がらせをしていると思うでしょうね」
俺の言いたい事を理解してくれたようで、四人共頷いて納得している。まずは、今回の騒動を男性側がどのように見ているかを理解してくれなければ、先に進む事は出来ない。
「恐らく何も知らない男子生徒たちからは、今回の騒動は、アルベルト殿下・マルグリット嬢・ナタリー嬢の三角関係からなら痴情のもつれであると思われているはずです。ですので、女の戦いと言わせてもらいました」
マルグリット嬢もナタリー嬢も、話を聞く限りでは親しい男子生徒はいない。ならばいっその事、男子生徒の支持は完全に切り捨てた方がいい。それを納得させるためにも、もう一押ししてみるとしよう。
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