第24話

 そして訪れた次の休日、俺の姿はいつもと変わらずカノッサ公爵家の屋敷にいる。そして、いつもの面子であるイザベラ嬢とクララ嬢二人の他に、今日はマルグリット嬢とナタリー嬢の二人もこの場にいる。マルグリット嬢もナタリー嬢も、イザベラ嬢やクララ嬢に負けず劣らずの美少女であり、アルベルト殿下や側近の人たちが好きになってしまうのも分かる。

 俺は今、アイドルや女優と言ってもいい美少女四人と同じ空間にいる事で、もの凄く緊張している。そんな緊張が伝わってしまっているのか、マルグリット嬢やナタリー嬢とは、未だに一言も会話がない。その事もあって、この部屋には妙な緊張感が漂い、誰もが口を閉じたままでいる。しかし、何時までもこのままではいけないと心を奮起させて、俺が口火を切る事にした。


「え~と、あの、初めまして。俺はベイルトン辺境伯の三男で、ウォルター・ベイルトンと申します。今後とも、お見知りおき下さい」


 マルグリット嬢やナタリー嬢に対して、努めて和やかに自己紹介をする。彼女たちは、アルベルト殿下たちに毎日の様に嫌な思いをさせられているとの事から、俺なりに気を遣って挨拶をしてみた。すると、俺の気遣いが良かったのかは分からないが、マルグリット嬢もナタリー嬢も、何処かホッとした様子に変わる。


「初めまして、ウォルターさん。私はマルグリット・ベルナールと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」

「は、始めまして。私はナタリー・コーベットと申します。よろしくお願いいたします」


 マルグリット嬢は、公爵家のご令嬢らしく堂々と挨拶を返し、ナタリー嬢は、俺がご実家よりも格上にあたる辺境伯家の者だという事で、少し緊張気味にではあるが挨拶を返してくれた。二人の様子からは、男性に対しての苦手意識や嫌悪感までは感じられない。今の所そう言った負の感情を抱いているのは、アルベルト殿下や側近たちに限定されているのだろう。

 だが、これから先に関しては分からない。何か大きな切っ掛けがあれば、男性恐怖症などになってもおかしくはない状況だ。もしそうなってしまうと、この世界で生きる貴族の女性としては致命的である。

 それに、イザベラ嬢やクララ嬢の二人が、マルグリット嬢とナタリー嬢に毎日付きっ切りで傍にいれる訳ではないだろう。イザベラ嬢やクララ嬢以外にも、周囲に頼れる人たちがいればいいのだが……。その辺りの事を、イザベラ嬢やクララ嬢はどの様に考えているのだろうか。

 もしこのまま二人が孤立していくと、ローラ嬢やその取り巻きたち、そしてアルベルト殿下や側近たちにいい様にやられてしまうぞ。


「三人の顔合わせと挨拶が終わった所で、お菓子や紅茶を楽しみながら、秘密の作戦会議を始めるとしましょうか」

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