第17話
「ん~‼美味しい‼」
「やっぱり、オバちゃんたち良い腕しているわ」
「ここまで美味しいパンケーキは、私も初めてです」
「…………これ、私でも作れるかな」
「ナタリーさん?」
「あ、え~と。弟や妹にも、これを食べさせてあげたいなと思って」
ナタリーさんの言葉に、私たち三人の胸にジ~ンとくるものがある。私たちはナタリーさんから、コーベット男爵家や男爵領について、色々と話を聞いているの。ナタリーさんのご実家がある男爵領は、非常に自然が豊かな領地なの。畜産をメインにしていて、中でも酪農に力を入れているのよ。そんな男爵領で作られている牛乳やチーズなどの畜産物は、非常に美味なの。だけどその事を知っているのは、男爵領を訪れた者か旅の商人くらいね。そして、何故私がそれを知っているのかというと、実際に口にした事が何度もあるからなのよ。
私が食の発展に取り掛かろうとした時、やっぱりこだわったのは品質ね。公爵家のお金と権力を上手く使って、アイオリス王国内の様々な領地から、色々な食材や畜産品などを取り寄せたのよね。その時に男爵領のものを気に入って、最終選考まで残したんだけど、結局諦めたという経緯があったのよ。
諦めざるを得なかった最大の理由は、輸送に掛かる時間ね。コーベット男爵領は、王都から結構な距離があるのよ。だから王都に輸送するのに時間がかかるし、その間に鮮度が落ちていく。その事がどうしてもネックとなってしまい、選考から外さざるを得なかったのよ。この事をナタリーさんに話した時、驚いた後に泣かれてしまい、大いに焦ったのは言うまでもないわね。
「作り方なら私もクララも知ってるから、今度の長期休暇にナタリーさんのご実家に遊びにいった時にでも、振舞ってあげましょう」
「そうね、それがいいわ‼」
「その時は、私もご一緒でお願いしますね」
「勿論よ‼」
「えっと、いいんですか?イザベラ様もマルグリット様も、ご予定があるのでは…………」
「友達のお家に遊びに行くのも、私にとっては立派な予定よ」
「流石イザベラ‼良いこと言うね~」
「フフフ。でも、私もイザベラ様と同じ意見よ。でも、お友達の家に遊びに行くなんて何年ぶりかしら、とっても楽しみね」
「……分かりました。精一杯のおもてなしをさせていただきます‼」
フンッと、鼻息を荒くしながら意気込むナタリーさん。そんなナタリーさんが可愛らしくて、私たち三人はニコニコと微笑んでしまう。だけど、そんな和やかで微笑ましい空間が、一人の人物によってぶち壊されてしまったのよ。
「あら、そこにいらっしゃるのはお姉さまではなくて?」
スフレパンケーキを楽しむ私たちに話しかけて来たのは、今魔法学院を騒がせてい中心人物の一人でもある、マルグリット様の一つ下の妹さんである、ローラ・ベルナールだった。
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