2、妹に嫉妬

私は彼の家に辿り着きます。

彼の苗字である『遠野』の表札が見えます。

彼は込み入った事情により、妹と2人暮らしをしています。


「はぁー……、ふぅー……」


深呼吸して心を落ち着けます。

どんなシチュエーションで迎えるのかシミュレーションが大事です。

インターホンを押そうとした時です。

ガチャ――ドアが開かれます。


「行ってらっしゃいねお兄ちゃん!」

「おう、お前も遅れずに学校行けよ」


仲の良い兄妹なのです。

遠野達裄トオノタツユキは私の彼でありいつもぶすっとしていて常に機嫌が悪く見えます。

だがちょっと慣れると照れ屋なだけで素直じゃないツンデレさがあります。

遠野恋トオノレンちゃんは出来る妹で中学3年生でありますが、見た目は140センチくらいの小学生にしか見えない容姿をしています。

もう1度言います、仲の良い兄妹なのです。

ただそれも問題なのです。

仲が良すぎる兄妹なのです。


「はい!お兄ちゃん、帰ったら今日チョコレートケーキを振る舞いますので楽しみにしていてください」

「恋の手作りなのか!?」

「当然なのですよ!」


私もそんなに大きなものはありませんが無い胸を張る恋ちゃん。


「すっげー楽しみだ。夜に楽しみがあると一段と頑張れるな恋!」

「はいです!」

「あぁ、いまの表情可愛かった」

「えへへ~」


お互いシスコンとブラコンなのです。

平気で手を繋いだり、写メで撮ったりしていたりするのです。

私達が付き合いはじめたらスキンシップは自重はされはじめましたが、根本的なシスコンは治りません。

諦めるしかありません。

彼は家族に飢えているのを長年知っているのですから……。


「おっ、おはよう揚羽」

「おはよう、達裄」


朝から妹のイチャイチャを見せられ私は上手く笑えてますでしょうか?


「ん……、お前……」


じっと達裄が私の顔を覗き込みます。

ストレートな髪質で中性的でありながらやっぱり男らしい顔付きをしている彼。


「ど、どうしたの達裄」

「顔引きつってないか?」


あんたのせいだ!


「何かあったのか?なんなら俺力になるぜ」


シスコンを指摘して治るとは到底思えません。

自覚してるし最近自称すらします。

過剰に妹を可愛いと褒めまくる人です。


「シ――なんでもない!」


指摘も出来ないまま顔を反らします。

そんなに何回もハリボテの勇気は出せません。


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