つれづれ神無月

架空カフェ

第1話 1ヶ月文章書けるかな

 10月1日。

 それは1ヶ月のはじまりであると同時に1年度の後半戦突入の日である。

 カーテン越しに柔らかな光を感じる。布団から起き上がり大きく伸びをひとつ。そのまま窓を開ければ、晴れやかな青空とお日様のおかげで意識が覚醒する。

 風に運ばれてきたキンモクセイの甘い香りが部屋中に広がる。ああ、なんて素晴らしい1日のはじまり。

 こんな日は仕事も気持ち良く取り組めそうだ。これほど新しいことに挑戦するのに適した日があるであろうか、いやない。


 そんな朝を迎えたかった。迎えたかったのだ。だがこれらは全て妄想の話。現実は無常である。

 今朝の天気は台風でお日様どころか青空すらも見えなかったし、台風による低気圧で布団から起き上がるだけでも一苦労だった。どしゃぶりの雨で窓どころか玄関のドアすらも開けたくなかったし、ついでに仕事は大忙しで気持ち良く取り組むどころか鬱々した残業までせざるを得なかった。

 それでもカクヨムに登録して、こうして文章を書いているのには2つ理由がある。

 ひとつは今日が10月1日だったから。

 僕は見た目や体裁に結構こだわるタイプの人間だ。いや、少し違うな。正しくは「見た目や体裁にこだわる意識が高いタイプのフリをして実際はやらない言い訳を重ねるのが得意なタイプ」の人間だ。ついでに飽き性なものだから、外側を作ることに時間をかけすぎた結果中身は空っぽのまま飽きて放ったらかしにしてばかりである。

 そんな僕が何か新しいことにしっかり取り組むためには、キリが良くてカレンダー上で見映えが良いタイミング(=月始め)に即決でやりたいことを決めてその日のうちに挑戦する(=外側を作りこみすぎる時間を与えない)ことだ。

 実際この作戦で何度か成功している。例えば先月はこの作戦で腹筋する習慣を身につけた。1ヶ月のうち腹筋した日数は3分の2だったけど、飽き性でなおかつ万年運動不足でもあるこの僕が20日も続けることができたのだ。これはもう成功と呼んでいいだろう。

 もうひとつの理由は、今朝カクヨムで素敵なエッセイを読んだからである。

 元々僕は人の話を見聞くのが大好きだ。飲み会で人生の先輩方がする昔話を聞くのが大好きだったし、Twitterのタイムライン(以下TL)で他人の日常を覗き見してるだけで無限に時間を溶かすことができる。

 そんな僕にとって今朝読んだ連載エッセイはTL以上に密度の高い他人の日常の宝庫で、さらにTL以上に読んでいて面白かった。

 面白かったから自分も真似したくなった。おままごとをする子供と一緒である。子供はママのように美味しい料理を作れないけれど、ママに憧れてオモチャでニセモノの料理をして真似事を楽しむ。

 僕も同じだ。今朝読んだエッセイのライターさんのような読みやすくて面白い文章は絶対書けない。だって文章書くの今日が初めてだし。

「あのくらいの文章、僕でも書ける」みたいなおこがましい思い上がりで始めた訳ではないので、そこは本当に誤解しないでほしい。書ける訳ない。憧れなんだ。尊敬してるから「カクヨムでエッセイを書く」という形だけ真似をして、少しでも近づきたいと思ったんだ。


今月はエッセイに挑戦しよう。「文芸の秋」いいじゃないか。そう心に決めたのが朝の話。

しかし、決めたはいいものの書く時間がない。

朝は睡眠時間を優先しすぎて1分電車に乗り遅れたら遅刻するギリギリを攻めた出発。

片道1時間の電車通勤。

家に着く頃にはクタクタで夕飯もろくに作れず唯一できることと言ったらTL監視くらい。

気力が戻らないまま気づくと寝る時間。

そんな毎日を振り返り、やっぱり僕には無理だ諦めようと昼ごはんを食べていたその時ビビビっと天恵が降りたのだ。

幸か不幸か、このご時世でも僕の会社はテレワークが一切ない。平日は毎日出社で通勤ラッシュとお友達の日々。座れないし、TL監視くらいしかできることないし、せめてこの1時間をどこでもドアでショートカットできればプライベートで有意義に過ごせるのにってずっと思ってた通勤時間を、今、ここで、活用しよう。虚無に浸っていたこの時間で文章を書こう。

決意してからは早かった。大急ぎで昼ごはんを胃にかきこみ、カクヨムに登録をした。

午後の仕事の合間には、何を書こうか妄想に妄想を重ねた。長かった1日がようやく終わり、電車に乗りこんで、ようやく妄想を文字に変換している今に至る。


 そんな訳で今日から1ヶ月間、電車移動の時間を使ってエッセイを書いていきます。

 よろしくお願いいたします。

 最終日31日まで続くことを祈っていてください。

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