ゲーム大好き座敷童
トマトも柄
第1話 ゲーム大好き座敷童
俺の住んでる部屋には妖怪がいる。
妖怪と言うには善良で有名な妖怪ではあるのだが……何故か現代の時代に合わせてなのか少し変わっている。
今その妖怪はコントローラーを手に握って、夢中でパソコンのモニターに食いついている。
「ああ! 今屈伸したでしょ! 家に行って呪ってやろうか!」
「座敷童がそんな物騒な事を言うな!」
そう、俺の家には座敷童が住み着いているのだ。
「え~。 だって今屈伸して煽って来たんだよ~。 それくらいしてもバチ当たらないでしょ」
「限度は考えてくれ……。 座敷童にそれが原因で不幸になったとか聞きたくないぞ」
「ぶー!」
この座敷童はちょっと変わっており、とにかくゲーム好きなのである。
何かしらねだるのはゲームと食事で、欲しいのがあったら必ず俺に言ってくる。
「ねえねえ! このゲーム欲しいの~」
座敷童が俺に甘えてねだってくる。
「いや……二カ月前に買ったばかりじゃないか……」
「新作出たのー! 買ってー!」
俺はため息をついて、座敷童に確認をした。
「で、今回は何のゲームなんだ?」
そう言うと、座敷童がパソコンからネット検索で情報を引き出して、
「これこれ! 満月の吸血鬼ってタイトルの格闘ゲーム! これ今度配信でもするから買って!」
「本当に最近出た作品じゃないか。 配信でするって?」
「言ってなかったっけ? ずっと家いるの暇だからパソコン使ってゲーム配信してるんだよ。 最近登録者人数百人になったんだー」
俺は口をあんぐり開けている。
「色々買ってあげたのは知っていたけど、まさか配信までしていたとは……」
「けど、その使った費用分はちゃんと渡したでしょ?」
「もしかしてこの前、ノリで買った宝くじ当たったのって君がしたのかな?」
俺の言葉に座敷童は目を逸らす。
「お前の仕業だったのか。 前に頼まれて買った金額と殆ど一緒の額が当たっていたからな」
「けどこれで元は賄えたでしょ?」
座敷童の言葉に否定は出来なかった。
実際に出した分が返って来たのでその分趣味とかに出す費用少し増やしたのだ。
「今回もちゃんと買ってくれた分を他の所で運まわすから買ってー!」
「買うのは全然良いぞ」
「やったー!」
「代わりに条件がある」
「え!? 私の体に何かする気でしょ!?」
「何もしないわ!」
「え? じゃあ何が条件なの?」
「後ろで黙ってるからゲーム配信見せてくれ。 後ろで晩酌するから」
「いやん! 乙女の恥ずかしいとこ見られちゃう!」
座敷童が顔を赤らめて顔を手で隠す。
「いやいや。 配信で普段をさらけ出しているのが何を言ってるんだ……」
「私だって乙女だもん!」
「あんた百年以上座敷童やっているでしょうが」
「乙女はいつまで経っても乙女だもん!」
「まぁ、とりあえずはそれが条件だ。 するか?」
「全然良いよ。 私の無双する姿を見せてやる!」
いや、君はなぎ倒していく妖怪ではなく、幸運を運びに行く妖怪でしょうがと言いそうになったがここは黙っておこう。
翌日、座敷童が配信の準備をしている。
俺は横で酒とつまみを用意して傍に携帯電話を置いておく。
どんな配信なのかを見る為である。
そして、予定時刻の時間になった。
「こんばんはー! 私、座敷童のわらわだよ♪ みんなよろしくね♪」
俺は横で飲んでいた酒を吹き出しそうになったが、ギリギリで持ちこたえた。
座敷童が配信で座敷童を名乗ってるってツッコミ所多過ぎでしょうが。
「さぁ! 今日は待ちに待った満月の吸血鬼! 買ってきましたぞー!」
携帯から配信の画面を覗いてみると、コメントでおお!とかよっしゃー!とかのコメントで溢れかえっている。
コメントの中には対戦しようかと誘われているコメントもある。
「よし! みんなで対戦しよう! 私が勝って皆に不幸を届けてやるー!」
いやいや! 君は幸福を届ける妖怪でしょうが!
俺の言いたい事を読み取ったかのように、
「私は普段は幸福を届けるけど、対戦ゲームになったら別だからなー」
そう言って盛り上げながら座敷童が配信を続けていく。
しゃー!とかおらー!とか叫び声を横に俺は横でつまみを食べながら見ている。
座敷童は楽しそうに配信をしている。
妖怪だろうが何だろうが配信一つで対等の立場で話し合える。
俺はこれはとても大切な事だと思っている。
この座敷童には配信を続けて貰おうと思っている。
俺は酒を飲みながら座敷童の配信を眺めていた。
こんなに仲間がいるなんて羨ましいくらいだ。
こんなに仲間がいるのは知らなかったよ。
そのまま視聴者に楽しさという運を配って欲しい。
ゲーム大好き座敷童 トマトも柄 @lazily
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます