第12話

「さて、もう一度確認するわよ。侯爵への報告は?」


「「侍女のミウが心変わりし!お嬢様を守ったため失敗!」」


「私は命の恩人であるミウの事を?」


「「大変気に入り!専属の侍女にすると約束!」」


「よろしい」


俺の質問に、騎士達が大声を張り上げて答える。

此方の機嫌を少しでも損ねれば地獄の痛みが待っているので、彼らも必死だ。


――ミウが裏切ったせいで、アレーヌが助かってしまった。


そう言う筋書きで話を進めて行かせて貰う。

実際は魔法で炎を消して騎士共を俺が制圧した訳だが、それを馬鹿正直に報告させる気はないからな。


「にゃーん」


俺の足元に、二匹の猫が頭を摺り寄せて来た。


二匹とも白地に黒ブチの見た目をしており、名前はカムイとカンという。

まあ――ミウの弟達だ。


彼らは現在、俺の魔法で猫の姿に変わっている。


こういう状況なのは、ミウの裏切りに対する報復が彼らに向く可能性があったためだ。

病気は治ったが、侯爵の手の者に殺されましたでは笑い話にもならないからな。

ミウを傍に置く以上、責任をもってちゃんと保護してやらんと。


因みに、彼らの家には魔法で偽の死体を用意してある。

侯爵はまず間違いなく二人が病気で死んだと判断するはずだ。

魔法で調べられるとあれだが、一々貧しい家の子供の死が本当かなんて調べはしないだろうからな。


この二人には新たな生活拠点を用意してやる予定なのだが、流石にこっちは直ぐにという訳にはいかないので、暫くは俺の拾った猫として傍にいて貰う事になる。


「じゃあ近くの街まで行って、車を用意してきなさい」


「はっ!畏まりました!」


騎士達は馬に乗って近くの街へと向かう。

足を手に入れる為御者も連れて。


転移魔法ならひとっ飛びなのだが、まあそう言う訳にもいかないからな。


「ミウ。貴方の弟達に暫く不便を強いるけど、安全確保のためだから我慢してちょうだい」


出来るだけ早く生活拠点を作ってやるつもりではあるが、流石に2-3日じゃ無理だ。

何故なら、自由にできるお金を持ち合わせていないからな。

その旨をちゃんと伝えておく。


「お嬢様。お気になさらないでください。弟達も、元気に動けるなら猫でも犬でも全然かまわないと言ってますし」


彼女は俺の足元の弟達を見て笑う。

どうやら、猫になっても問題なく意思疎通が出来ている様だ。


変身させた当の本人である俺でも、只の「ニャーニャー」にしか聞こえないというのに……これが家族の絆って奴だろう。


「そう」


少し羨ましく感じる。

アレーヌは言うまでもなく、俺の家族仲も良好とは程遠かった。

ま、だからこそ手紙一枚出して未練なく転生できた訳だが。


「お嬢様。私に何が出来るかはわかりません。でも受けた恩を返す為、何でもやるつもりです。もし私に出来る事があったら、何でもお申し付けください」


「期待しているわ」


俺にはチート能力があるから、基本自分一人で全て出来る。

だが味方は多いに越した事はない。

オートムーブがあるとは言え、長丁場の仕事だからな。

信頼できる相手が傍に居るか居ないかで、気分も大分違って来るという物。


この後、戻って来た騎士達の用意した魔導車に乗り、俺達は分館へと向かう。


さあ、母親とご対面といこうか。

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