軽音部なんか、廃部にしてやれ
黒猫のプルゥ
00 前置きなんか
ギターのストラップが肩に食い込んで痛い。親指と人差し指の間に挟んだピックが、手汗で滑り落ちそうだ。少し高すぎるマイクスタンドを押し下げて、それから俺は――。
それから俺は、何をすればいいんだっけ?
歴史ある第一体育館兼講堂に、整然と並べられた無数のパイプ椅子。座しているのは、我が清丘高校のニューフェイス達だ。一部の睡魔に囚われた者を除いた一同の注目を、俺は今、一身に浴びせられている。その視線の束をまともに受け止めると目が眩むようで、俺は耐えきれずに顔を背けた。
ドン、ドン、ドン!
背後から臓腑に響くような強烈なバスドラムの音が打ち鳴らされた。早く始めろ、という意味の合図だろう。
これは、そう、新歓ライブだ。軽音部の代表として、俺たちは演奏しなくてはならない。
しぶしぶ目線を落としたまま振り向き、再びマイクと対峙する。が――。
しまった、何を話すか考えてこなかった。曲を練習するのに手一杯で、その前置きなんか、すっかり失念していた。
「あー……」とにかく、思いつくままのことを言ってみるしかない。「皆さん、ご入学おめでとうございます。はじめまして、俺は、軽音部の
ウェルカム・トゥ・キヨオカ!」
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