第54話 番外編 氷の作り方

 初詣より遡り高校卒業して1カ月を過ぎた5月のある日のこと。


 戸村からこんなSNSが来た。


『ヤッホータケちゃん!氷の作り方教えて』


確かに暑い日が続いている。しかし、氷の作り方ねぇ。


『冷蔵庫に教えてもらえ。』


これでこの話は終わりかと思っていた。何か別の頼みがあっての、会話の糸口かなと。


『ちげーわ!透明なかき氷用の大きい氷だ!2年の文化祭の時の氷だよ!タケちゃん作ってたじゃん。あれ』


あれ、なるほど。スマホを開くといくつかブックマークが残してあったので順次送り、最後にメモに残してあった俺の実験メモも送った。

 

 氷は不純物を少なく、ゆっくり大きい結晶に育ててやると硬くて溶けにくくなる。戸村がシロップに凝ってたから氷に俺は凝ってみたけど、結局、戸村は葡萄ジュースを凍らせたかき氷にしたんだよな。とちょっと切なく思い出した。


『ありがとうタケちゃん。コレコレ』


『氷作ってどうするの?』


『ひ、み、つ』


ムッとしたので、先ほど送った氷の作り方達を無言で送信取消ししていった。俺だってやる時はやるのだ。


『タケちゃんごめん。』

『待って。』

『許して。』

『送って。』

『お願い。』


連投のうるさいメッセージを眺めながら戸村の焦った顔を思い出して溜飲を下げた。


『氷作ってどうするのか教えてくれたら、送ってやるよ。』


『6月1日が氷の日だから、氷作って、科学部慰問しに行こうかと思って。タケちゃんも一緒に行かない?』


なるほど。戸村は後輩にかき氷をご馳走したいと。でも、まて、その日は


『その日は授業あるし、夕方は先約があって。行きたいけど。今度また誘って。』


『分かった。残念。』

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