第41話 番外編 戸村を怒らすな3

 戸村は数学班の居城、理科室2に俺を押し込むと鍵を閉めた。


「秘密だよ。タケちゃん。」


と言っていとも楽しそうに語ったのが以下の内容だ。


 生徒会からの理科室での料理禁止の通達の理由は、食の安全性と部活外での理科室の私用、ガスの私用などが理由に挙げられていたらしい。


 そこで戸村は、理科室での料理を第二の実験テーマとして「調理器具と実験器具の互換性」と名前をつけて申請して科学部顧問から許可を正式に取ったらしい。もともと理科準備室でガスバーナーで小鍋を沸かしチャイを作る先生や昼食に蕎麦そば茹でるゆでる先生など科学部の顧問なんてそんな先生達だ。全然問題にしてなかったからスルッと戸村の要求は通ったらしい。


 生徒会を黙らすだけで終わらないのが戸村だ。相井を使って調べたのは生徒会に誰がタレ込んで問題にさせたかだ。


 ヨシコ、あの書道部部長の仕業しわざだった。


「最初はターゲットは蟹ちゃんだったらしいけどバックの吹奏楽部が怖くて諦めたあきらめたんだと。で、次がタケちゃんだったらしいよ。でもタケちゃんって全然攻撃材料が見当たらないんだって。で、俺。」


 ヨシコに一矢報わないと気が済まないのが戸村だ。数学が得意で数学科の先生と仲良しの戸村は数学の先生の好物の問題と質問を用意して雑談に興じ、ヨシコのクラスを担当している先生と


「文系のクラスは問題を解かせるのに当てようとすると皆、下を向くんだよなー。当てるの気の毒になっちまう。成績いい奴だけとかもマンネリ化しちゃうし。こっちが解答してばっかりだと子守唄になっちゃうし」


「あー、数学好きで、板書するのが大好きな奴知ってますよ。」


なんて会話を交わしてヨシコをさりげなく売り込んできたらしい。これはイケると思った戸村は全教科にヨシコの名前を植え付けてきたらしい。


「これで、しばらく、ヨシコは全授業でさされまくりだ。ざまあ。」


 実はさされまくりのヨシコより、いくら滅菌済みシャーレとはいえ、派手な赤いハートがのっている寒天培地のようないかにも怪しいと見た目がうったえるゼリーを食べ終わるまでにこやかに見張られた生徒会の連中の方が触らぬ戸村に祟りたたりなし、怒らせてはいけないと心に決めたという事実を戸村は知らない。



番外編 戸村を怒らすな fin

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