第36話  酸素 タングステン アルミニウム リチウム

 蔵森さんが残してくれた傘に描いてあった曲は「月の光」で暗号は「またいつか」そう解読できた。「月の光」は俺がピアノ曲と言われてすぐに出てくる曲で「またいつか」は、会えるか?と聞いた俺への返事だと勝手に思っている。


 俺はS大学工学部機械工学科に合格した。うちから電車で1時間半はかかるけど何とか通えそうだ。そしてS大学は蔵森さんが順調に内部進学を決めた音大の隣駅にある。少し近づいた。山口さんが教えてくれたけど転校してから蔵森さんはかなりの努力をしたらしい。


 大学合格を担任に連絡したあと、俺はSNSを開いた。ずっとそうすると決めていた。玉砕覚悟で文集の仕事が終わって以来使っていない画面で、メッセージを送る。


『第一志望の大学に合格しました。アルミニウム ヨウ素 タンタル ヨウ素』


合格発表よりドキドキしながら返事を待つ。


ほどなくして返事が来た。


『タングステン アルミニウム タンタル ケイ素 モリブデン』 



fin

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