第10話 理科室2

 理科室2に来た蔵森さんはあちこち見回していた。戸村と俺が活動しているこの部屋は昔は地学室であり今は授業で使われていない。


 この高校から地学が消えて久しい。物理、生物、化学室は理科室1、3、4として元気に使われており実験が主な活動の科学部員はそちらを根城にしている。科学部と言っても数学的な内容をテーマにしている俺と戸村は理科倉庫と化し、それを隠れ蓑に数学的要素の先輩たちによってひっそりパソコンコーナーが作られた理科室2が活動場所だ。三年の先輩の受験が忙しくなり数学班は二年生がいないため、今は俺と戸村が後を継いだ形になっている。別名科学部パソコン班とも言われ、時折他の班のデータ入力や打ち出し、下手したら他の部活や先生たちからパソコン系の厄介事を引き受けている。まあ、そのために良いパソコン機器を揃えられているので仕方ないのだけど。


 天球儀、地質模型、岩石標本、自動温度計などの地学教材の他、何故かのワシや亀、狸、鹿の首の剥製、壊れたDNA模型、ガラス細工用バーナーとかふいごとかなにやらカオスな一角を物珍しく眺めている蔵森さんに椅子をとりあえず勧めた。のは戸村だけど。


「なんかいろいろあって廊下から覗くと倉庫だと思ってたけど中は博物館みたいに綺麗なのね。」


と蔵森さんの感想だ。


「パソコンとかコンピュータは埃がダメだから掃除は大事なんだ」


それは先輩から受け継いだ事で、多分学校内で1番綺麗な部屋かもしれない。俺と戸村は剥製達が1番埃を呼ぶしデカいので敵視している。


「戸村いても大丈夫?」


追い払いたくてもせっせと接客している戸村をどうしたら良いか分からず、とりあえず聞いてみると、蔵森さんははっと我に返ったような顔になり


「私の方が邪魔しにきているから、戸村さんが黙っていてくれるなら全然構わないです」


と言った。


「俺は口硬いから」


と戸村がうなづく。俺も思わずうなづく。意を決っして蔵森さんが話してくれた内容はやはりニヤ男と伊藤の事だった。

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