第7話 連弾
家に帰ってからもう一度動画を見る。
ハンガリア舞曲第4番。
ピアノの事はよく分からないけど、蔵森さんの左手と伊藤の右手が交差して始まる。それだけでなんか艶かしい。この当時この2人中学生なんだけどな。曲もまたなんか切ない。
あの時、ニヤ男は、蔵森さんと伊藤は付き合っていて少なくともニヤ男は付き合っていると思っていてでも少し雲行きが怪しくて蔵森さんが俺といたから揶揄った。と俺は解釈していた。で、その背景はちょっと複雑でそれが蔵森さんのあの態度だったのであろうと。
でもこの動画を見れば、ちょっと複雑とか付き合ってたとかそれは簡単なものじゃなくて蔵森さんと伊藤の関係はパートナーで上を目指して努力を重ねてきた間柄で。でもなんで2人ともうちの高校なんかに。うちは県で3番目くらいの偏差値の進学校だ。ピアノを真剣にするのであれば、私立とか音楽科がある県立高校とか他にある。ピアノを練習する時間を確保するにはうちの課題は過酷すぎる。しかも伊藤は陸上部って。ピアノ弾いてる時間なんかなくなってしまうのでは。いや、俺には分からない世界だし。伊藤は超人なんだきっと。で、それに合わせて無理して蔵森さんは体調悪いとか。なんて奴だ超人伊藤。動画は蔵森さんが手前で、伊藤の顔は分かりにくかった。でもちょっと特徴的なつり目と浅黒い横顔を探せば本人を生で特定できそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます