第21話・策士ではありません
「ぼくとしては、キャピュレット家当主は、正統な血を引くきみの父上が後を継がれるべきだと思うよ。本当ならきみが彼女の立ち位置にいたはずじゃないの?」
「……どうしてそれを?」
ロミオの指摘に、わたしは顔が強ばるのを感じた。このことは、キャピュレット家でも箝口令が敷かれているのに。
「キャピュレット家と、モンタギュー家が敵対関係にあるからと言って、皆が皆、仲が悪いわけじゃないし、憎んでいるわけでもない。一族の中には、こっそり仲良くしている者もいる。そこから聞いた話だけど、現在のキャピュレット家当主一家に、不満を持つ者達も少なくないみたいでね」
つまり叔父達に不満を持つ者達が、ロミオ側に漏らしたらしい。ロミオに同情の目を向けられた。
父を買ってくれている大叔父さま達は、叔父が当主の座に着いているのを良く思っていなかった。叔父は祖父の愛妾の子で、祖父が侍女に手を出し生ませた子だった。ゆくゆく使用人とする事が決まっていて、執事として養育していたところだった。それが跡継ぎである父が、家を出奔したことで勘当せざる得なくなり、他に男児がいなかったことで、祖父は皆の反対を押し切って、叔父を跡継ぎに添えた。その事に不満を持つ者の口を閉ざす為に、父に宛がっていた一族の中でも、有力な家柄の許嫁を叔父の妻にした。
それが仇となったようだ。叔母は元々使用人だった叔父が夫となることに我慢ならなかったようで、見下すようになった。叔父は叔母に頭が上がらなくなった。それを不甲斐ないと見た大叔父達は、祖父が亡くなって叔父が当主になったことを良い事に、父の勘当を解くように叔父に突きつけ、何か不祥事があれば父を跡継ぎに据えようとしていた。
大叔父達に取っては、父が母と結婚したときも、自分達を頼ってくれれば、母を養女に迎えて父と結婚させても良いと言ってくれるくらいに父に期待をかけていた。
それに待ったをかけたのは、叔母一族で、自分達が後見に着くことで叔父を跡継ぎにしたのに、それはないだろうと一発触発の状況となった。
それをいち早く感じ取った父は、密かに大叔父達を説得して回り、事の収拾を試みた。その行動が逆に評価されてさらに、期待を集めてしまうことになってしまった。逆に叔父は不評を買ってしまったようだ。
「もしも、ジュリエット嬢達のことが公にでもなれば、もう彼らは一族には見切りを付けられて当主の座から引きずり落とされることになるだろうし、ぼくとしても夢見る夢子ちゃんよりも、策士家のきみと我が家が手を組んだ方が、明らかに両家の為になると思っている。きみを妻に迎えれば清廉な剣聖さまもついてくるし」
「策士家だなんて、わたしはそんなんじゃないわ」
「あの花祭りの競技大会の企画提案者は、きみなんだってね。聞いて驚いたよ」
「誰に?」
「もちろん、ベルサザからだよ」
「彼と仲が良いの?」
「悪くはないよ」
ロミオは、くすりと笑う。こちらの手の内は見通されていて、翻弄されているこの状態が面白くなく感じた。
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