詩「懐かしい人」
有原野分
懐かしい人
しゃりしゃり
と
鳴る
土手の上の
ノスタルジア
足の裏に
空と剥離した
太陽を感じて
匂いのない川が
鳥のように
地面を這っていく
騒々しい下流の
伸びていく松の枝
その日の当たらない影に
私の実家はあった
水と水の表面張力のように
思い出の中のあなたは
私をいつだって溺死させる
懐かしい人
久しぶりの邂逅に
遠くに見える月が割れる
背中に張り付いた真っ赤な手形
それを見る度に
私はいつかの海を思い出す
懐かしい人
真夜中の虫にように
無意識に打つ寝返りが
夜空に浮かぶ魚を捕まえて
キラキラと光る鱗に
苦しかった過去を反射する
懐かしい人
死んだ兄を思い出すとき
どこからともなく鳴る音は
太陽が殺す影の音か
しゃりしゃりしゃりしゃりと
ああ涙の人
詩「懐かしい人」 有原野分 @yujiarihara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます