綯交世界は今日も百合ゆりッ!?
燈外町 猶
第一章っつっても私死んだんだが。
第1話・早くトーコちゃんの体温を感じたいんだもん♡
いや~まさかね……普通、こんなことにはならないと思うじゃん。
私だってこんな死に方したくなかったよ。未来がわかったらもっと上手に立ち回ったよ。べつにアイツのこと……嫌いってわけじゃなかったし……?
あーでも確かにすれ違いは多かったかもしれない。
互いが互いの為に行動して、それが裏目に出てしまったことが多々あったかもしれない。
妙な現場を見られて疑いや嫉妬を向けられたこともあったかもしれない。
誤解を生んでそこはかとなく気まずい雰囲気に陥ったこともあったかもしれない。
だけど解決してきたじゃないか。私達を阻んできた壁は、時に乗り越え、時に壊し、そうやって進んできたじゃないか。それなのに……どうして……。
「トーコちゃーん……? ダメだよこんなところで寝ちゃったら。いっつも『風邪引くぞ』って私に怒るのトーコちゃんでしょ?」
…………えっ? ちょっと待って? 私確実に死んだよね。お前に殺されたよね。一瞬の出来事だったけど、首絞められて縄に吊るされて水責めされて釜ゆでにされて火にくべられて凍結させられてゴナゴナに砕け散らされたよね?
なんで死後の世界でゆっくりまったり生前を思い返そうとしている私に話し掛けられんの? つか……あれ、リジュじゃね? がんがん近寄ってきてね? 天使も悪魔も神も閻魔もびびって何も言えてなくね? 誰でもいいから一言注意しろって!
「起きるのが遅いから、迎えに来ちゃった♡」
「リジュ、あのさ……」
「まだ体が完全に再生してないけど……いいよね。早くトーコちゃんの体温を感じたいんだもん♡」
「ちょっと待ってくれ。それさ、今戻っちゃったらめっちゃ痛くねー?」
「んー……わかんないっ♡」
語尾に♡付けたら全部許されると思ってんのか……? そんなわけないじゃん、どんな美少女がやったところでそんなん苛つくだけじゃん! そんでお前の可愛さが苛つきを凌駕してくるのも苛つきに拍車をかける!!
……いや落ち着け、違うだろ。これは全て尊すぎる百合作品が悪い。百合小説が、百合漫画が、百合アニメが、ドラマが、映画が悪い。あれらの尊い成分がリジュの感情教育を大きく歪めてしまったんだ。
だから私は悪くない。
決して他の女子に
「さっ、行くよ、トーコちゃんっ♡」
……ああ……確か……
服の襟をリジュに掴まれてズルズルと引きずられるしかどうせやることもないんだ、しばらくは思考に集中しよう。蘇ったらするべきこととかを考えておくんだ。
今度は失敗しないために。
宇宙人の幼馴染と神様の許嫁、そのどちらもを幸せにできる方法を、今はただひたすらに考えよう。
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