エピローグ【side : アンジェ】


【章間SS――処刑】



 ユノンくんはギルティアを倒し、復讐を果たした。

 そのことは、私にとってもうれしい。

 あんなやつ……死んで当然の人間なんだ……!


 ユノンくんは疲れて寝てしまったみたい。

 リアちゃんの胸に抱かれて、幸せそうに眠っている。

 今はもうユノンくんには何も考えないで幸せになってもらいたい。

 彼にはそうする権利があるはずだ。


 今後一切、彼の幸せを邪魔するものは、私が排除する――!


 本来だったら、私に力さえあれば……あの場で私が殺してやりたいくらいだった。

 でも、戦闘に不向きな私は、なにもできなかった。

 そしてそのことが悔しかった。

 ユノンくんを失ったのは、私が甘かったせいだ。


「ごめんねユノンくん。今度こそは、きっちりケリをつけるから……」


 ユノンくんが眠っている間に、私にはまだやることがある。

 エルーナとレイラは、ベッドに寝かせられていた。

 私はそれを乱暴に引きずり回して、ダンジョンの壁に鎖で縛りつけた。

 ゴブリンたちが手伝ってくれたのですぐだ。


「まったく……ユノンくんはとことん優しいなぁ……」


 ギルティアを殺したことさえも、ユノンくんは少し気にしているようすだった。

 そんな優しい彼が、彼女らを殺すのは無理だろう。

 だが、エルーナとレイラを助けて生かせば、きっと彼女らはまた復讐をしにくる。

 そんなこと、間違ってもあってはいけない。


「ユノンくんがやらないなら……私がやるしかないよね?」


 さっそく私は、眠っている二人を叩き起こすことにした。


 ――バシ!


 ムチを使って、2人の顔面を強打する。

 すると、2人とも苦しそうに目を覚ました。


「あ、アンジェ……!?」


「あ? 起きた? 今がどういう状況か、わかるよね……?」


 私はにっこりと幼馴染たちにほほ笑む。

 しかし二人はそれを無視して怒りだした。


「ちょっとアンジェ! これはどういうこと!?」

「ほどきなさいよ……!」


 まったく……まだ自分の立場がわかっていないようだ。

 私がどれだけ怒っているのか、まったくわかってない。


 ――バシ!


 もう一度、ぶったたく。


「ねぇ……? うるさいよ? 二人はこれからお仕置きを受けるの。わかってる?」

「ひ、ひぃ……!?」


 そう、ただ殺すだけでは私の気が治まらない。

 ユノンくんが受けた痛みは、こんなもんじゃない。


「今から、2人をボコボコにするね? もちろん、文句はないよね?」

「え……ちょっと……アンジェ、冗談でしょ……!?」


「ううん、私は本気。ゴブリンたちにも手伝ってもらうから……わかるよね?」

「ひ、ひぃっ……!? う、嘘でしょ……!?」


 私が今からすることは、ユノンくんへささげる愛の行為だ。

 この2人をボコボコにして、その後私の魔法で回復させる。

 そしてもう一度ボコボコにして、再起不能にするの。


 二度とユノンくんに危害を加えないようになるまで、2人の心をバキバキに砕く。

 それが、私からのユノンくんへのプレゼントだ。


「殺さないよ……? 安心して? 精神的に壊すだけだから……」

「へ……? ど、どういうこと……!?」


「二人が2人じゃなくなったとき、初めてユノンくんと合わせてあげるから。それまで大人しく……壊されてくれるよね?」

「「い、いやああああああああ!!!!」」


 私は二人が記憶を失い、自我が崩壊をするまで壊し続けた。

 これで、2人は生まれ変わった。

 ユノンくんの近くに置いても、安心なほどに……。


「ふぅ……疲れた……!」


 これが私の――復讐だ。

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