闇スキル《憑依》のせいで魔族扱いされ殺されたが、中ボス魔物【メタモルスライム】に憑依して復讐を誓う。ゲーム知識でダンジョン運営は楽勝で、殺されてもDP消費で何度でも復活。仲間達に溺愛されて幸せです!
第11話 手のひら返し【side : ギルティア】
第11話 手のひら返し【side : ギルティア】
俺たちは魔力封じの腕輪を装備させられ、城へと連行された。
兵士たちに乱暴に引きずられて、身体はボロボロだ。
「はぁ……まったく、君のような男が今代の勇者だなんてな……頭が痛いよ」
偉そうに椅子に座った王様が、俺を見て大きなため息をついた。
ムカつく野郎だぜ。
俺は勇者だから、王様よりも重要な存在なんだぞ?
「ギルティア……君は自分がしたことを、わかっているのか?」
「は? 俺は俺のやりたいようにやるだけだが?」
「それでは困るのだよ……君はもっと勇者として自覚してほしい」
俺は勇者として、これ以上ないほど自覚しているつもりだ。
だからこそ、世界のために物資を頂戴してやったのだ。
「俺は勇者だぞ? 一般人が俺に逆らうほうが悪いんじゃないのか?」
「はぁ……私はもはや君を勇者とは思わないよ……」
王様は、俺のことを心底見下した目で見てくる。
こいつら散々俺のことを持ち上げていたくせに……。
手のひら返しが早すぎる!
「いいかいギルティア。大きな力には大きな責任が不随するものだよ? そしてその力が大きければ大きいほど、力に溺れたときに、浮き上がるのが難しくなる……。私は王として生きてきて、そのことを嫌というほど理解した。だからこその忠告だ」
王様は知ったような口ぶりで、俺を見透かしたように言う。
そういう態度がムカつくんだ……!
まるであの、パーティーリーダーのユノンみたいに……!
「俺はアンタなんかとは一線を画す男だぜ? 勇者になるべくしてなった男だ。そんな力に溺れるようなタマじゃない」
「そうかな? 私にはもうすでに、君は溺れて自分の力じゃ浮き上がれなくなっているように見えるがね……」
ふん……わからずやめ。
魔王がいよいよ本気を出して来たら、俺に頼ることしかできない無能のくせにな。
俺はいずれ魔王を滅ぼす男だ。
神からそう任命されたのだ。
そのときになって、後悔するがいい……!
「おいおい、俺を勇者に任命したのはあんたら国のほうだぜ? それなのに、俺に好き勝手されたら困るのかよ?」
すると王の横に立っていた神官が口を開いた。
「…………たしかに、私はあなたを勇者に任命しました。それは神からの命だったからです。ですが、それと国民の感情とは別です。あなたがこのまま好き勝手振舞っていたら、いずれ誰もがあなたを信用しなくなるでしょう」
「だからどうしたというんだ?」
「来たるべき魔王との決戦のとき、そのときになって、皆が一つになれないと困るのです」
「俺は勇者だから一人でも戦える!」
歴代の勇者がどうだったかは知らないが、俺はそもそもAランクパーティーのエース級でもあったんだ。
そこに勇者固有の力が加われば、敵なしだ!
「あなたは何かにとりつかれているようだ……。コンプレックス……か、それとも……。なにか物凄い憎しみを背負っている」
王はまた、見透かしたように俺を決め付ける。
俺にコンプレックスだと?
そんなもの、あるわけがない。
「ああ、確かに俺は、魔族に対して深い憎しみを持っている。だからこそ、俺が勇者に選ばれたんだと思っている。俺はあの日から、復讐の鬼として生きてきたんだ。魔族に復讐するためなら、他の奴らのことなんか知ったことか。俺は俺のために、勇者をやるんだ」
そう、俺はなにも、世界を救おうなんて大それたことを考えているわけではない。
ただただ魔族が憎い、それだけで戦っている。
勇者として魔王を倒せるのなら、一般人が困ろうと俺はどうでもいい。
「魔族……ですか……。あなたが殺したユノン・ユズリィーハ……。彼は魔族ではありませんでした。ですから、あなたには一応、その容疑もかかっているんですからね? 我々はいつでもあなたを、法のもとで裁けます」
「…………は? ユノンが魔族じゃないだと!? なにを馬鹿なことを言っている!」
俺は確かに、感じたんだ。
家族を殺した魔族と同じ、邪悪なものを……!
「あなたはそうおっしゃいますが……のちにユノン氏の死体を調べたところ、それは間違いだったことがわかっています」
「は? 間違いだっただと!? あの時お前らも含めて、観客全員、俺を止めなかったじゃねえか!」
あのとき、皆がユノンを恐れていたし、魔族だと信じて疑わなかった。
それは俺だけの責任じゃないはずだ。
「あの場でだれも止めるものがいなかったのは……みなあなたの力をおそれていたからです」
「は? 俺の力だと?」
「あの場で一人だけ抗議の声をあげたとして、誰が聞き入れたでしょう。あの雰囲気の中で、一人だけ声をあげたとしても、あなたはその人物も魔族扱いするだけでは?」
たしかに、憑依の能力で操られてるとしか考えられないからな、そんな奴。
俺はヤツの憑依の能力という文字を見た瞬間、頭が沸騰したんだ。
俺のトラウマが蘇り、なんとしてでもユノンを殺せと、命じてきたんだ。
正直、あのときの記憶はあいまいだ。
「あなたが勇者であることを理由に、このことは現在、数人のものしか知りません。ですが……ことをおおやけにすれば、あなたは犯罪者ですよ? なのでどうか、大人しくしておいてくれませんか? 魔王との決戦が始まるまで……」
「クソ……!」
俺を脅そうというわけか。
いい度胸してやがる。
「ここにお金を用意しました。あなたはこれが欲しかったのでしょう? 正直に言ってくれれば、金銭の支援くらいしましたのに……」
「ふん……俺は勇者だぞ? 一度突っぱねた手前、そんなこと言えるかよ」
だが、この金はありがたくもらっておくとしよう。
くれるというものを断る理由はない。
「正直今のあなたは、大きすぎる力を手に入れてぼうそうしているようにしかみえない。あなたは勇者の器ではないように思える」
「は? うるせえよ。何が言いたい?」
俺は神官の言いようにムカついて、ガンを飛ばす。
「あなたの力だけは、頼りなのですから……しっかりしてもらいたいのです、勇者殿」
「ふん……。だったらせいぜい、俺のことを邪魔しないでくれよな」
その後、俺たちの拘束が解かれた。
「あなたが勇者であることに免じて、今回は見逃します。お金も渡したので、今後は大人しくしておいてください」
「ああ、わかったよ……っち」
まるで首輪をつけられたようだ。
勇者というからもっと自由な冒険を楽しめるかと思っていたが……。
これじゃあスポンサーとその広告塔みたいなもんだ。
これだったら勇者なんかに選ばれず、普通にAランクパーティーとして活動していたほうが楽しかったかもしれない。
それにしても――あなたの力だけは、頼りなのですから。
だとさ……。
俺に求められているのは、俺の勇者の力だけなのか?
レイラにエルーナ……こいつらが俺について来てくれるのも、俺が勇者だからなのか?
そう考えると、途端にむなしくなってくる。
結局みんな、俺のことなんてどうでもいいんだな……!
だったら俺も、勇者の使命なんかしらねえ!
この力を利用して!好きに生きてやるぜ!
「ギルティア……お金もらったんだし、はやくホテルにいきましょう?」
レイラがそう言いながら、俺に腕を絡ませてくる。
「うるせえよ。俺は今そういう気分じゃないんだ」
「あ、ちょっと……!」
俺は女二人を置き去りに、速足で先を行く。
ついてくるなら勝手についてこい……。
俺は、自由に生きるんだ!
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