章間SS アンジェの思案【side : アンジェ】


 ギルティアたちと別れてから、私はこっそり後をつけていた。

 ユノンくんを探しに行きたいけど、なにせ手がかりがない。

 それよりは、ユノンくんがどこかで生きていることを信じて――彼のためになることをしようと思った。


 ギルティアたちは、故郷の村に帰り、ユノンくんの妹を殺すとまで言っていた。

 そんなことは、私が絶対にさせない!


 それに、もし本当にユノンくんが生きているとするならば、彼もまた、同じことをするだろう。

 妹さんを護るために、故郷のランタック村に向かうはずだ。

 だから、私もそこに行けば会える!


 今はギルティアたちをこっそり監視しつつ、それに備えるのがベスト!

 私は草葉の陰から、元パーティーメンバーのようすを見張る。

 もはや彼らのことを、幼馴染とも思えないほど憎い。


「まったく、アンジェもばかだよな……大人しく俺に抱かれていればいいのに」


「ほんとにね……ん……」


 野宿だというのに、今日もまた、ギルティアとレイラは肌を重ねていた。

 しかも私のことを悪く言いながら。

 なんとも悪趣味で、反吐が出る。


「あの子、本当にユノンのことが好きだったみたいだからね。仕方ないわよ。なんといっても、毎晩一人でユノンの名前を呼びながら自分を慰めていたからね……。あの子は誰にもバレてないと思ってたみたいだけど……」


 エルーナがそう付け加える。

 私は顔がかぁっと熱くなる。

 まさか、エルーナに見られていたなんて……!


「そうなのか? アンジェも可愛いところがあるんだな。いつか俺が慰めてやりてぇ」


 ギルティアは、エルーナの身体をむさぼりながら、そんな言葉を吐く。

 私の身体に鳥肌が立つ。

 ギルティア……まじキモ……。


 前々から……いや、子供のころから、ギルティアはクソキモイ奴だとは思っていたけど……。

 今の彼は本当にキモイ。

 どうしてあんなのが勇者なんだろう……?


 それに比べるとユノンくんは、とっても誠実だ。

 真面目過ぎるくらいだよ……。

 ギルティアはいつも私の身体を、舐めまわすように見てきた。

 本当に気持ち悪い。

 たぶん脳みそが下半身についているのだろう。


 でも、ユノンくんはまったくそんな素振りを見せなかった。

 それはそれで困るんだけど……。

 もしかしてユノンくん、私みたいな女の子は、タイプじゃないのかな?


 うう……。

 早くユノンくんにまた会いたいよぅ。

 ギルティアたちの声をここで聴いていたら、余計にそう思えてきた。

 妙な感じ……。


 ギルティアたちはどうせ、のんびりやってくるだろう。

 まさかユノンくんが本当に生きているかもなんて、思ってもないだろうし。

 それに、ユノンくんがいないということは、マッピングスキルも使えない。

 彼らがこうして野宿を選んだということは、お金もないはずだ。


 なら先にランタック村に行って、妹さんを助けられる!

 私はギルティアたちの監視をやめ、先を急ぐことにした。


 さほどお金がないのは、私だって同じだった。

 私も一人で野宿をする。

 身の危険がないように、ちゃんと結界を張る。


「これでよし……と」


 聖女の上級職に目覚めた私は、上級結界を使いこなせるようになっていた。


「うう……ユノンくん……早く会いたいよぅ……」


 そしてテントの中で、今日も私は独り、彼の名前を呼ぶのであった――。

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