第23話 魔王と勇者 #2
「――あれ? アイちゃん? ルナちゃん?」
目を覚ましたミーシャは、二人の姿が見えないことに気が付いた。
部屋の中には、ミーシャと、すぴすぴ寝息を立てているオシリスしか残っていない。
「……」
なにか――嫌な予感がした。
母さんが居なくなったのも、確かこんな夜更けではなかったか?
ぎし、と音を立ててベッドから降りる。
ミーシャは長い金髪を
◆
ぱたんと扉を締める音が夜の静寂に響き、オシリスが薄く眼を見開く。
オシリスは、ぼうっと焦点の合わない瞳で誰もいない部屋を見渡して、呟いた。
「むにゃ……魔王様……?」
◆
ミーシャは街を抜けて、夜の森へと入っていく。
無心に歩みを進めているうちに、街の住人が取り決めた不可侵領域を超えていた。
鋭い枝が肌を切り裂き、血が滲む。ミーシャは気にしなかった。
あの日、母さんは、深い森の中で死んでいた。
……どうして、だっけ?
うまく思い出せない。
何かとても大切なことを、忘れてしまっているような――
ミーシャは早足で森の中を進みながら、ふるふると首を振る。
母さんのことよりも、いまは、二人の方だ。
わたしはきっと、ルナちゃんとアイちゃんが、母さんと同じ運命を辿ることを恐れている。
この先に二人がいる。
そう考える合理的な理由などなかった。だが不思議な確信に突き動かされ、母の形見のペンダントを握りしめて、ミーシャは森の深部へ進んでゆく。
どれほどの時間、歩いただろうか。
「あれは……?」
遠くから見てもわかる【異常事態】が、そこで発生していた。
そこは深い森の奥地にぽっかりと空いた広場だった。
――炎、熱、光、轟音、そして、聞き慣れた声たち。
心臓は早鐘のように打ち、息を切らせて駆け寄った先で――
妹のように大切に想う二人が、縦横無尽に、人智を超えた戦いを繰り広げていた。
「ふたりとも、何やって――!」
その声は――ルナとアイには、届かなかった。
後ろから接近した黒い影が、ミーシャの口を覆ったためである。
(な、なに……⁉)
――ミーシャの意識は、そこで途切れた。
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