テスト×パンツ
模倣の廃廊の3階の照明こそあるが他に何もない部屋に三人で入り、新子と向かい合う。新子は軽く身体をほぐすようにストレッチをしながら初に下がるように指示する。
「……狭いけど大丈夫か?」
「ん、ヨクくんの動きを見たいだけだからね。十分十分」
まぁ……実際にそんなに激しく動くことはないか。
不死だとか攻撃が拘束に変換されるとかで怪我をさせることはないだろうが小さい子供の姿の女性をぶん殴ったりは出来ないし……まぁ、最低限動けるところを見せたらいいだろうか。
そう思っていると、ストレッチをしていたはずの新子の身体が一瞬で目の前から消える。思わず「はっ!?」と呆気に取られかけ、すぐさま既に能力を測るものが始まっているのだと気がついて前方に前転をするように跳ねて背後からの新子の拳を回避する。
「あ、ちゃんと避けれるんだ。どうやって分かったの?」
「どこから来るのかは見えていなくとも、前方にいないことは見えてるんだから前に避けたら躱せるだろ」
「おー、いい判断。現役の探索者達を追い払っただけあるね」
褒められているが……。新子は思っていたよりも数倍速い。明らかに筋力は俺よりも劣っているはずで、速さとはつまり如何に身体を強く押し出す力があるかということのため、筋力がない新子は本来なら遅いはずだが……と、思っていると再び新子の体が再び消える。
「ッ!」
今度は視界になんとか捉えられて右の方から脚を上げて蹴りを放っているのが見えるが、反撃をする抵抗感から腕を上げて蹴りを防ぐだけで終わる。
蹴りの威力は体重の割に強いものだったが受け止められないほどではなく、背丈の割に長い脚をグッと掴んで止めようと踏ん張ろうとする。
だが、蹴りを受け止めたことで一瞬浮いた体が「落下していない」ことで踏ん張りが効かずに空気中で転倒しかけて、爪先を伸ばして地面につけて転倒を防ぐ。
掴んだ新子の脚をそのまま抱き寄せて動きを封じようとした瞬間、初が「ストーップ! ストーップです!」と止めに入って新子と二人で静止する。
「どうした? 初」
二人とも怪我をしていないけど、暴力的なのが苦手だったかと思っていると初は指を新子の方に向けて手をパタパタと動かす。
「ぱ、パンツ見えてるじゃないですか! だ、ダメです!」
言われて掴んでいる脚の先を見ると、子供っぽいふわふわとしたミニスカートの奥に可愛らしい苺柄の下着と白いふとももの付け根が見えていることに気がつく。
「まぁ、下着を見られるのはちょっと恥ずかしいのは恥ずかしいけど、戦闘訓練みたいなのだったら仕方ないし……」
指摘されたことで意識しているのか新子は片手でミニスカートを抑えて隠そうとしつつ返事をする。中止かと思って俺が手を離して脚を地面に下ろすと、新子は再び脚を上げて俺に脚を掴ませる。
「もうちょっと続けていい? 思ったよりも遥かにいい動きをしてるから楽しくなってきてさ」
「ダメです。明日試験を受けるんだったら運動しすぎたら良くないですし……。せ、せめてズボンを履いてください。兄さんは女の子にデレデレするタイプなんですから、その……パンツを見せるようなことはやめてほしいです」
いや……俺もパンツを見たからといってその女の子を好きになったりはしない。小さい女の子とは言えパンツが気にならないわけではないが、それでデレデレしたりはない。
初にそれは誤解だと伝えるためにもう一度脚を離して初の方に向き直る。
「あのな、初、俺が好きなのはパ……初だけだ」
「今、「パ」って言いませんでした?」
「言ってないです」
俺のクールな言い訳により初は納得したのかしていないのか微妙な表情になり、それを見た新子が口を開く。
「とりあえず、だいたいどれぐらいか分かったから終わりでいいかな。あ、お風呂のお湯溜めないと」
「溜めてきましょうか?」
初は自分から引き受けてパタパタと廊下に出て行きホテルの方に帰っていく。新子はそれを予見していたように俺の方に向き直って「じゃあ、ちょっと話をしようか」と口を開く。
「……やっていけそうですか?」
「んー、まぁ、ヨクくんの動きはすごくいいね。なんていうか素人丸出しだけど無駄が少ないし勘がいいからかなり強いと思う。試験はまぁ問題ないだろうし。そこらの探索者に負けることはないだろうね」
「まぁ実際に数人がかりでも勝ったな。……でも、かなり身体能力任せで動いているから、俺よりも体格でも筋力でも遥かに弱い新子を倒しきれなかったな」
「それは攻撃をしないようにしていたからでしょ。……まぁ基本的にめちゃ強いし格闘技術を身につけるという伸び代もあるんだけど……」
新子はほんの少し頬を赤らめながらスカートの端を軽く抑える。
「その……スカートの中を見てから明らかに集中を欠いていたというか……スカートの中にばっかり視線がいってたのがちょっと……」
「……ごめんなさい」
「い、いやいや、健全な男の子がスカートの中を見たいのは知ってるから大丈夫だよ。えっと、そうじゃなくてね。戦闘中に仲間や敵の女の子が激しい動きではだけるときもあって、そこで隙を晒したら致命的だから……ヨクくんはもっと女の子に慣れる方がいいと思う」
女の子に慣れるって言われてもな……。まぁ、なんというか、女慣れしていないというのは確かだ。
でも慣れろって言われても基本的に初とぐらいしか関わらないしなぁ。
「まぁ……師匠としてパンツを見せてあげることぐらいは出来るけど……。そこら辺は追々でいいか、対人戦はしばらくないと思うし」
新子は少し顔を赤らめながら言う。
師匠としてパンツを見せるってなんだろうか。いや……そもそもパンツは初に指摘されたから気になってしまっただけで、新子のパンツを凝視していたわけではないのだ。
「おほん、とにかく試験の方は問題ないと思う。明日の時間を調べて遅れないようにだけしよう」
「ああ、はい。本格的な修行は明日以降ですか?」
「んー、そうだね。アパートに引っ越してからがいいかな。色々と忙しい間にやって変な癖がつくのも嫌だしね。ストレッチと筋トレと走り込みぐらいをしてくれたらいいよ」
基礎的な体力を上げるメニューか、案外普通そうだな。
話を終えた俺と新子もホテルへと戻って初と合流する。
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