真の心

俺は、人の心を読むことが出来る。

この能力は仲の良い一部の友達にしか言っていない秘密だ。

といっても、殆どの人はそもそも信じるわけもないだろうけど。



昔は不便に感じていた能力だったが、今ではうまく付き合えてると思っている。

常に人間の裏側を知ってしまう。これはつまり、悪人に出会わずに済むからだ。

危険な目に逢うことも無ければ、下手に損をすることも無い。


ただ、一つだけ問題点があるとするならば。


(うわ明日雨かよ……サイアク)

(俺って生きてる意味あんのかな)

(どこかに良い男いないかなぁ)

(腹減った)

(~♪ やっぱいい歌だ)

(そろそろ髪の毛切ろうかね)

(初めてのデート……緊張するっ)

(あーだりぃ。隕石落ちてきて全員死なねえかな)

(遅いなーカエデ)

(今日はとっても調子が良いぞ!)

(昼だと見えないな。風船)

(あの女の子スタイルいいねぇ)

(今日も決まってるなオレ)

(……………………ねむい)

(ケーキ楽しみ~)


この能力によって分かる、心の声。それ自体は問題ではない。

誰にだって裏はあるから。むしろ、それが普通なんだ。

どれだけ優しくても、腹が立ってイライラしてる時はある。

どれだけ賢くても、実際は分かっていない時もある。

それが代償なんだろう。この能力を手にしてから俺は……




(アハハハハハハ!!!

アハハ!アハハハハハハ!!

アハハハハハハ!!!

アッハッハッハッハ!アハハハハ!

アハハアハハ!

アハハハハハハハハハ)



裏表が見えない人間が、心底怖くなった。

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