行けるとこまで行く
「来週から入学戦という、一年生のトーナメント戦が始まるから各自準備しておいて。参加については自由参加だから、参加したくないって人は私に報告しなさい」
突如始まった何かのトーナメント戦。
何か毎日一試合があるらしい。
周りを見渡すが皆やる気を見せていて、参加したくないって人はいないらしい。
周りがやる気を出しているのなら、普通な俺も今からやる気(笑)を放つ。
それにしても、トーナメント戦かぁ。
試合数がどのくらいあるのか分からないし、どこで負けるのが普通だろうか。
一回戦で全体の半数が落ちるとなれば一回戦負けってかんじはする。
だけど、相手がとても弱かった場合とかは避けなければ。
というか、そもそも本気でやったとして一回戦を確実に勝ち抜けれるのか?
俺は、普通だしな。
よし、決めた。
入学戦は本気で挑む。
俺が負けたところが普通だ。
◆◇◆◇◆◇
一週間が経った。
今俺は第三闘技場と呼ばれる場所に立っている。
ちなみに闘技場は第五まである。
目の前には対戦相手がいる。
周りの観客席には同じ一年生の他に在校生が多数いる。
ていうか、人多くね?
まずい緊張してきた。
ヤバいもう始まる。
ちょっと待って。まだ心の準備が。
『始め!』
うおぉぉぉぉっ!待ってって言ってるでしょぉ!
(『す、ストック1、魔力10000』)
ちょっと遅れた。相手もう動き出してる。
相手は剣か。
でも、スピードが遅い。
空中に現れる炎を纏った龍。
驚いたように立ち止まる、相手。
彼は少しレベルが低いらしいな。この魔法に驚くくらいだ。
それなら、負けるわけにはいかないな。
「ドラゴン・ブレス」
動かない彼に炎龍が炎を吐く。
「うあぁぁぁぁっ!!」
彼は避けることができずに直撃した。
当然、無事ではいられず彼は火傷を負い気絶した。
『勝者、フィン・トレード!』
よし、普通に勝てたな。
ん?どうしてだか、観客席がうるさいな。
まあ、そんなもんかな。
俺はそんなに気にすることなく、第三闘技場を後にした。
明日はどうなるかな。
◆◇◆◇◆◇
「入学戦一日目終了。各自それぞれの闘技場で試合を見てもらったが、有望な選手はいたか?」
ある、一室。
四人の男女が机を囲み会議を行っていた。
「はい。私のところはやはり、マルコ・ブレイブがずば抜けて優秀でしたね。彼の光属性の魔法も凄いのですが、剣術は相当な実力を持っております」
眼鏡をかけた少女が発言する。
「勇者候補か。確か彼は歴代の勇者候補と比べてもかなりの実力だと言われているな。
だが、それで勇者候補序列八位……最下位だからな」
部屋の代表者のような男性が相槌を打つ。
「じゃあ、次は私だね!
私はエリザ・クライスさんを推してるよ!
あの子、たぶん上級魔法をほとんど使いこなせるんじゃないかな〜。もしかしたら絶級魔法もいくつか使えるかも!
あとあと、無詠唱ももうすぐ習得すると思う!」
小さな少女が元気よく言う。
「そうか。彼女は魔導師候補だったな。確か、序列二位の。
それにしても、絶級魔法に届きうる実力か……それに無詠唱も。まあ、これからに期待しよう」
「じゃあ、最後は僕ですね。僕は、あのフィン・トレードが有望だと思います」
背筋を伸ばした青年が高めの声で言う。
「彼は、確か色々と噂になっている……」
「そうだよ!何か上級以上の魔法を使ったり、ステータスの適正属性が『炎属性』になってたり!」
「それから、魔力がエリザ・クライスより高く、スキル《剣術》のレベルが9だったとか」
眼鏡の女性の言葉を聞いて、場を仕切る男性の眉が動く。
「レベル9だと!歴代勇者と変わらないではないか!……まあ、いい。続きを聞こう」
「はい。えーと、僕がもう一人注目していた一年生がいまして。名前がアルス・シルバ。
今日、トレードさんとあたった人です。
スキル《剣術》のレベルが5となかなか高くて。トレードさんと少しは拮抗した試合になると思っていたのですが……。
瞬殺でしたね」
「そうか。それで、どうやって?」
「それが、無詠唱で見たことのない魔法を使っていて。炎の龍を創り出すみたいな魔法なのでしょうが……」
青年は言葉を途切り、眼鏡の女性に視線を向ける。
「そんな魔法見たことも聞いたこともありません」
「だとしたら、オリジナルか?」
「断定はできないですね。無属性魔法かもしれません」
「でも、彼の適正属性は……」
「はい。火属性と風属性です。ですが、ステータスを書き換えるみたいな無属性魔法があれば、どうでしょう」
「ッ!!」
一同が緊張感に溢れる。
「まだ、分かりませんが彼は何かを隠しています。なので……」
青年は再び眼鏡の女性を横目に見る。
「そうですね、私が行きましょう。明日の彼の戦闘時に彼のステータスを〈鑑定〉します」
室内に紅い夕日が入り込み焼きつける。
彼らは生徒会。
学園トップの実力を誇る四人が所属する、学園の取締役。
夕日は何事もなかったように静かに沈む。
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