写真を撮る(1291)

駅のホームの一番端っこに立っていると

隣の駅に続くレールが見える

複雑に交差しているそれと

宙に浮いている線

青に食い込み

家があみだくじになっていた

まるで川のようで

複雑な石

水流の飛沫

ごうごうの音

線路は久しく見ていない川を思い出した


写真を一枚撮る


遠くから車両がやってくる

遠くから列車がやってくる

どんどん近づいてくるのが嫌だ

あの綺麗な曲線が

無機質な鉄で汚されていく

為す術もないまま電車はホームへやってきた

案内放送が流れる中、端っこの景色に

汚い鉄が入り込む

人が作ったものに感動して

人が作ったものを恨むなど

アホらしい

写真をとっても端っこに電車が写る

これが出るまで待たないといけない

だけれど、僕は乗らないといけない


写真を一枚消した


当たり前の風景に感動し

その感動を台無しにされた

明日になれば同じものが見られる

今日の分を消して

明日の活力を得る為

僕は写真を撮って消す

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