そして令和

そして令和3年。

こんな祖母もそろそろ米寿です。今も元気そのものだし、頭も足腰もしっかりしています。この調子なら100歳まで生きるとお医者さんからも太鼓判を押されたと自慢しておりました。そうかなあ? そのお医者さんの見立ては間違っていると私は思う。図太い神経をしているからあと200年ぐらい生きそう。




まったくもう。ずっと騙されてきて、怒るとか呆れるとか悲しいとかでもまあ病気じゃなくて良かったとか、そういう感情がミックスされた結果、なんだか可笑しくなっちゃって笑えてきます。おばあちゃんったら策士すぎるじゃん。すごいや。嘘をつかずに、本当のことを意味深に言って、あとは相手の想像力に任せて、健康なのに50年ぐらいちやほやされてたんですよ。そりゃ長生きもしますわ。



そうそうユリちゃんですが、彼女も元気にしています。推していたアイドルの結婚でメンタルをやられたりはしていますが、でもまあ、とりあえず体のほうは元気です。



ちなみに、乳がんサバイバーではなかったことが判明した後、私と両親の洗脳はとけたので、祖母の「私の気持ちを察して」という空気に気づかないフリをできるようになりました。祖母が「温泉に行きたいわあ……」なんて言ったら祖母の好みの旅館を調べて予約を入れていたのは昔の話で、今は「そっかー。温泉いいよね~。私は北海道に行ってカニ食べたいな~」などと適当に返事するだけにしています。とっても楽になりました。


ユリちゃんに至っては、祖母に対して遠慮がなくなりました。時には強気に出ることさえあります。祖母が「(遊びに出かけたせいで)疲れてしまって、夕飯の支度が出来るかどうか自信ないわあ。今夜は家には私ひとりだし困ったわあ!」なんてユリちゃんのほうを見ながら言うときは、要するにユリちゃんに食事をつくってほしいという意味なのですが、ユリちゃんは「じゃあ、私が食事を用意してあげるね」といつもの優しい口調で言って、自分が好きなハンバーガーなんかを買ってきて、代金は祖母に支払わせるぐらいに強くなりました。

祖母はこれまで自分の好きな和食を周りが勝手に用意してくれる環境に慣れていたわけですから、当然ハンバーガーに拒絶反応を示しました。「あーたねえ、普通は和食を用意するものでしょう。何よこれ……」と文句を言うのです。でも、ユリちゃんに「文句があるなら食べなくていい」と言われて、ぶつぶつ不満をこぼしながらもしっかり完食しております。ハンバーガーだけでなくポテトもチキンナゲットも全部食べて、ホットコーヒーのおかわりを要求するほどです。祖母、胃腸も強いみたいです。


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