スライムボディ

◇◇◇◇



 今日のバイトは人造人間増田先輩と一緒だ。キラという魔法少女を倒すらしい。


 人造人間増田先輩は、どこが人造人間か分からない。普通人造人間といえば機械だろ? なぜか機械じゃなく、身体は青色のスライムボディだ。


 そしてスライムなのに人型、ベージュのスーツを着て、スーツと同じ色のハットをかぶっている。


 人造人間増田先輩と仕事の時は魔法少女と戦うことが多い。


 まぁそれは人造人間増田先輩の好み? というか、人造人間増田先輩は魔法少女が好きなんだ。女の人が好きといった方がいいのかもしれない。


 女子だけの戦隊と会って興奮したと言ってたから、間違いなく女の人が好きだ。


 人造人間増田先輩の戦い方は、体液を大きくしたり、小さくしたりしながら器用に戦っているらしい。これは飲み会の席のたびに言われる。


 見た感じ、触手で魔法少女の身体の色んなところを拘束し、触りながら、もてあぞぶように戦う姿は、怪人の性格を知っているこちらとしては若干ひく。


 が、だ。正直羨ましいとさえ思う。


 スライムボディは全身に感覚がある。粘液を出し放題で、服を溶かす粘液も出せるが、自重していると本人から聞いた。



 俺も服が溶ける戦闘には毎回参戦している。服を溶かすと魔法少女にトラウマを残し、心の力で強くなる。


 強い想いは強くなる要因になる。トラウマを糧にしたり、トラウマを心の力で克服したりとかしたら、目も当てられない。


 何回か俺も殺されそうになった。


 俺が組まれた時にワザとやっているのか。人造人間増田先輩からスマホのメッセージに『今日は良いもの見せてやる』と送ってきた日は、毎回服を溶かす回だ。


 戦闘員の雑魚敵連中のあいだでは、風邪をひいても、車にひかれても、人造人間増田先輩と組まれた時は、死んでも来るというスタンスの奴が多い。


 女の戦闘員には白い目を向けられながら、女の戦闘員は休み申請を出す。その休み申請を男の戦闘員が金で買うというシステムになっている。


 他の先輩と組まれた時の休み申請は、なんも価値が無いが、人造人間増田先輩の休み申請は金になる。


 後輩の岡村は休み申請を毎回最高値で売っている。しかも岡村は俺の休み申請を『最高値で売りましょうか?』と誘惑してくる。


 だが俺は良くしてもらった先輩と組んだ仕事は『休み申請を出したことがない』ということが自慢だったりする。岡村には悪いが、岡村の誘惑は毎回断っていた。




「キーキー! キーキー!」


 黒スーツで今日もお仕事。ただの雑魚敵。


 魔法少女と戦う時は河川敷などが多い。今日も河川敷のベンチに座っていた若い女性二人を人造人間増田先輩が触手で捕らえて、魔法少女のキラを待つ。


 若い女性たちが悲鳴を言いやすいように、俺たちが「キーキー」と言いながら煽る。


 悲鳴の疲れからか、人造人間増田先輩が触手で、もてあそんでいたからなのか、段々と若い女性たちの元気がなくなってきた。



 触手にもてあそばれて痙攣していく若い女性を見ていたら、空から黄色の光りが降ってきた。


 その光りは閃光になり、閃光が縦横無尽に目の前を移動する。その閃光は線になり、線が女性二人を捕らえていた触手に触れた。


 バチンッ! と、触れたと思った瞬間に触手が切れて、触手から女性たちが開放された。



 女性を守るように閃光は、若い女性たちの前で止まる。


 砂ぼこりが舞う。


 河川敷で風が強く、すぐに砂ぼこりが消えて、影に隠れた人物は現れた。


 黄色のミニのワンピース姿。スカートをはためかし、スパッツがチラッチラッと見える。


「太陽の魔法少女キラ! キラッと参上!」


 オレンジ色の髪をなびかせて、登場シーンの口上を述べた。



「お姉さんたち、早く逃げて」


 キラは後ろを振り向かずに女性たちに言うと、女性たちは足に力が入らないようだが、ゆっくりと逃げていく。


 キラはまだ魔法少女になって日が浅いと情報では聞いていたが、この魔法少女は強い。


 俺はそう確信して、いつでも逃げられるように、ベルトから転移石を取り出した。







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