怪人の核
◇◇◇◇
俺は学校へ来ていた。転移石で家から更衣室、そして更衣室の扉から学校の屋上の扉へと転移する。
眠気まなこが覚める間もなく、学校に着いていた。
屋上では俺が打ち付けられて変形したフェンスや、愛華の必殺技で抉られたコンクリートが、その名残りもないほど綺麗に直っていた。
屋上から校庭を見ると、黒い水も綺麗に無くなっていて、校庭も綺麗に直っていて、ここまで来ると壊れた全てが直っているんだろう。
もしかしたら全部が新品になって、前よりも見栄えが良くなっているのかもしれない。
太陽から少しの陽気を浴びて校舎に入る。階段をスタスタとは降りれない。愛華から『嫌』と言われたことが足枷になって、俺の歩きを遅くする。
愛華はなんとも思ってないと思うが、俺だけが元カノを引きずっている。
俺が愛華を想っているのは、『怪人化の核に、愛華の力を使っているからだ!』という曖昧なもので簡単に片付けられたら良かったのに。
教室に着くと、教室の前には沢山の女子生徒がいた。キャッキャッと、楽しそうな声が聞こえる。
「なんだ?」
異常な光景に……いや、男子バージョンを見たことがある。愛華が転校して来た一時期は凄かった。むさ苦しい男子生徒のキャッキャッよりも、女子生徒のキャッキャッとはしゃいでいる声の方が余程マシだが。
でもこの教室には女子がキャッキャッする程の物があるかと問われれば、無いと答えるしかない。
女子を掻き分け教室に入る。
すると女子に囲まれてる一人の金髪の男が視界に入る。女子を見下ろして愛想を振りまくイケメン。イケメンの身長が高いということはわかった。
こんなイケメンが居たら女子が放っておかないだろうな。
しかも悪夢に出てきた奴と顔が重なる。小さくチッと舌打ちしながら、コイツとは仲良くしないと心に決めた。
イケメンに近寄らないように自分の席に座る。
ふぅ、と息を吐く。何故か緊張している俺は愛華の方を見れない。
おはようって声を掛けようか。いやいや、違う。今はこんにちはだ。
俺が愛華になんて言葉を掛けようか考えている時に、トントンと、肩を叩かれた。
「君? ブレイドルドやったことはないかな?」
「はぁ? やってるはずないだろ」
イケメンの声に振り返る。チラッと見えた愛華は、弁当の昼ごはんを食べながら不機嫌そうだった。
「一試合だけ僕と試合をやってくれないかい!」
悪夢の再現か。
「嫌だ」
なんで俺が。
俺は、俺の肩に置いているイケメン君の手を払う。
イケメン君は俺に断られたことが意外だったのか、固まってしまっている。女子生徒の殺気がこもった視線が痛い。
はぁ、と盛大なため息を吐いて、言葉を流しやすくしてやる。
「で、まだ俺に用があるのか」
「あっ! 愛華!」
いきなり復活したイケメンは愛華に声を掛け始めた。
「この人が僕の探していた人かもしれない! 愛華もテレビのブレイドルドを毎日のように観てたろ。この人の剣は凄いんだ! 神域というのかな? 次元が違うんだ!」
イケメン君が愛華の名前を言いながら、愛華に言葉を投げかけている。でも愛華は無視していた。
「なんで無視? さっきまで無視なんかしなかっただろ」
「愛華?」
なんでお前が愛華の名前を気軽に言ってんだよ。
「あぁ、愛華とは幼なじみなんだよ」
「ほぅ」
もうコイツとはどんな褒美を貰ったって試合をしないことも心に誓った。
愛華は弁当を食べ終わったのか、スっと立ち上がって教室から出て行った。
プルルとスマホが振動し、ポケットからスマホを取り出す。
スマホを見ながら俺はコイツの頼みを聞いてやることにした。
「おい、試合やってやるよ」
「え! 本当かい!」
「あぁ」
俺はスマホの明かりを消した。
【桜木愛華】
『幼なじみの彼は強いよ。ブレイドルドでも、大学生高校生のなかで、世界一になったぐらいの実力。でもだからこそ、もし勝ったら……ごっこじゃなくて……もう一回付き合ってあげる。勇くんはブレイドルドに興味が無いと思います。私にも興味無いなら試合を断って、メッセージも消去してください』
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