第4話  極楽門のポン太郎先生

「極楽は、穢れを嫌います。先生が現世の時の様に、欲を剥き出したり、利用したりする行動は、絶対やめて下さい。地獄に落とされるかもしれません」


「大丈夫だ。ここまで来たら、打ち合わせ通り天界の住人たちに任せるよ」


 タクシーを極楽門の近くまで寄せ、ドアを開ける。


 狸山ポン太郎先生が降りた瞬間彼らが、襲いかかってきた。


 極楽の光に焼かれ、魂の消失も覚悟の行動だ。天使たちがポン先生を迎えに行った。


 しかし、ポン先生は、今まで全て自分の思い通り生きていた人だ。堪え性が無かった。


 まとわりつき、しがみつき、地獄のほうに、引きずって行こうとする彼らに、先生は、札束を叩きつけてしまった。


「うるさいゴミどもめ。お前たちはこれが欲しいのだろう。いくらでもやるからおとなしく地獄へ落ちろ」


 迎えに出た天使の動きが止まった。こうなってはもう無理だ。


 まとわりつく者と共に、揉み合いになり、霊道の端に転がっていった。どうやら自分たちもろとも、漆黒の闇にポン先生を落とすつもりらしい。


 金さえ出さなければ天使たちが、助けに入ったが、穢れだらけの先生は、見捨てられた。


 すでに端まで、引きずられた先生は、しがみつかれた、人達に落とされようとしている。


「助けてくれ、運転手。助けてくれれば倍払うぞ」


「契約外の事は、無理になっております」


 ポン先生は、漆黒の闇に吸い込まれていった。


 このタクシーは、極楽門まで送ると契約しているだけで、極楽までとは、約束していない。契約書にも記載事項としてあるし、念も押したのだが…。


 現世の悪いクセは、つい出てしまうものだ。さっきも注意したのに、残念な結果になった。


 もちろんポン先生からは、生前すでに契約料は、頂いているので、こちらは、問題無い。


 僕は、タクシーを現世に向けて走らせた。青い炎を吸い込みながら、タクシーは、霊道を後にした。


 二番目のお客様は、狐乃襟巻子このえりまきこさん。


 銀座に、君臨する夜の蝶だ。

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