第2話  狸山ポン太郎先生

 狸山ポン太郎さんは、都内の大きな病院に入院していた。


 呼び出された僕は、病室で予約を受け付けた。


「まあこの病院は、超一流だし、金もたっぷり払ってある。タクシーを利用するのは、まだ先だがな」


 特別室で、こんなに広いと看護士が、処置するときにたいへんそうだと思えるベッドに半分身体を起こして、笑っていた。


 しかし、どうやら迎えにくるまで、時間はあまりないらしい。


 霊道を走った事で、その人の残り時間が、分かる霊能力がついたようだ。


「最後に確認だけ。タクシーは、極楽門まで送るという契約です。門を開き先生を招きいれるのは、天使たちの仕事です。お間違え無いよう」


「門まで行けば、天使たちは必ず迎えに来てくれるのだろ?問題ない」


 その通りだ。


 1週間も経たないうちに、呼びだされ、ポンさんは、タクシーのお客となった。


「参ったな。まさかこんなにすぐに死ぬとは。あの病院は、あれだけ金を積んでやったのに…。訴えてやろうか」


 前半分が、頭皮になった頭を撫でながら、愚痴を言った。


 もちろんもう死んでいるのだから、無理だ。


「いいえ、あの病院はやはり一流でしたよ。ポン先生の病気は、最後はひどく苦しむらしいですよ。先生は、楽に逝けたと思います」


「そうか?やはり積んでおくものは、積むべきなのだな」


 豪快に笑いながら、ポンさんは、言った。


 狸山ポン太郎は、二期の地方議員を経て、国政に打って出た。


 国会議員としても、異例の出世を果たし、三期めには、もう大臣になっていた。


 狸山議員の集金能力は、凄まじく、彼の政党のほとんどが、彼に抱き込まれた。


 もし今の総理が、同時期にいなければ、確実に総理大臣になっていた。


 二世議員で、見た目が、爽やかな総理は、国民的な人気があり、ポン先生も彼の集票力には、勝てなかった。


 

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