幸福の金を鳴らせ
sENA
第1話 カラン
「カランコエの花言葉は『あなたを守る』なんだって!いい花言葉!!」
ごめん、僕にはその名を名乗る資格がないみたいだ。
・・・
「カランコエ君。あの子のこと見てない?まだ帰ってなくて。」
「んー、今日は遊んでないよ?」
あいつ、どこで道草食ってんだ?
・・・
「もう1週間、、どこ行ったの、!」
「お母さん、もう少し探してみましょう。」
まだ帰ってないんだ、、。どこいったんだよ。
…ん?何だこの花?こんなの昨日はなかったはず。
・・・
3年後
「カランおつかれ!今日も幼なじみちゃん探しに行くのか?」
「おつかれ、もちろん。」
「お前も毎日毎日すげえよな、3年前から欠かさずだろ?はやく見つかるといいな!」
「そうだね、ありがと。じゃあ行ってくるよ。」
あいつが居なくなってからはや3年。僕はあの日から毎日少しでも手がかりが見つかればと学校帰りに街へ繰り出している。
初めは本当にただ道草を食って遅くなっているだけだと思っていた。でもアイツはその日から1度も帰ってくることは無かった。
警察は誘拐事件として操作を進める方針らしい。僕もそれには賛成だ。あいつは自分から家出するようなやつじゃない。親のことが大好きだとよく言っていたし、特に悩みを抱えた様子もなくのほほんとしたやつだったから。
「誰か娘を見てない?もう3日も帰らないのだけど。」
どうやら誰かがまた居なくなったらしい。この街ではたびたびこういう事が起こる。子供が急に姿を消すのだ。もちろんその場には置き手紙のひとつも残されていないし、身代金の要求電話がかかってきたという話も聞かない。僕が情報収集に赴くのもこういう家の周辺だ。
娘がいなくなったと騒いでいた家の周りを人波に紛れてあくまでも自然な素振りで歩き回る。たぶん、ここにもあの花が落ちているはず…あっ、
「やっぱりあった。」
この花はこの街で子供が居なくなるとたびたびその子の家周辺に落ちている。初めて見つけたのは3年前のあの日だ。この街は花で溢れかえっているから皆気づいていないのだろうけど。
「ねえ君。その花、どうしたの。」
突然後ろから聞こえた声に驚き振り向く。
「それ、タンジーだよね。」
誰だ?この人。
笑っているが逆にその笑顔が気味悪い。マントのせいで服装はよく分からない。
「聞こえてるかな?」
「この花について、何か知っているんですか。」
そう、まずこの花の事を聞いてくるのがおかしいんだ。花で溢れかえってるこの街でわざわざ聞いてくるなんて、タンジーを探していたという理由以外にありえない。もしかしたらこの人は何か誘拐事件について知っているのかもしれない。
「いや、私はただの研究者で、」
「誘拐事件、についてですか。」
一瞬顔が強ばるのを見逃さない。
「3年前、幼なじみが行方不明になりました。その時も家のそばにタンジーの花が置いてあった。それからほかの誘拐事件でも、毎回では無いですけど。」
「…3年前から、か。」
何かを知っているかのような口ぶりについ熱くなる。
「あんたが犯人なのか!?何を知ってるんだ!返せ!あいつを返せよ!」
思わず目の前の男性に掴みかかる。3年かけて探してきた犯人の、手がかりをやっと掴んだかもしれないのだ。絶対に離すものか!
「落ち着けって少年!!ええと、つまり君は幼なじみちゃんを誘拐されて、手がかりとしてタンジーの花を見つけた!あってる!?」
「あってるよ!だから早く吐け!アイツをどこへやった!!」
「だから落ち着けって!!!!」
この時はこの日が、この人との出会いが、自分の人生を変えていくだなんて思ってもいなかった。
「着いてきな少年。幼なじみ探し、協力出来るかもしれない。」
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