ペット療法
くろせさんきち
ペット療法
ペットと共に暮らせる特養と聞いた。しかも施設側が用意してくれるらしい。
介護士の林さんに連れられ、一階の交流エリアに行くと、一台の踏台があった。
「どうぞ、この踏台がペットです」
「意味がわからん」
「アナムネの時仰ってましたね。お人好しのため昔から他人の踏台になってきた。でも、そのお陰で成長もしたと」
「つまり、それなら踏台その物も成長すると?」
「はい。育成をしながらリハビリもする、正に"ペット療法”です」
その日から、私がその踏台で昇降運動をすると、次第に段の数が増えていった。順調に成長しているのかと思いきや、暫くすると形が変わり、今度は段が減っていった。
「人と同じですね」
「角が取れていき、やがて体も……か」
「それと、ペットは飼い主に似るとも言いますし」
久し振りに面会に行くと、爺ちゃんの体は、前よりもまた小さくなったように見えた。
俺は爺ちゃんを隣の公園へ散歩に誘い、車椅子を押した。そして交流エリアから外に出ようとした時だった。
「やあ、今日もいい天気だね」
と、爺ちゃんが、緩やかな段差スロープに声を掛けた。
(了)
ペット療法 くろせさんきち @ajq04
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます