第8話 名ばかり趣味からの脱却
学生の頃には映画をよく観ていて、会社でも映画好きだと公言していたのに、最近は全く観ていない。一応、レビューサイトに感想を書く習慣もあったのだけど、そもそも映画を観ていないのでその更新もしていない。久々に自分のページを見に行ったら、最後に映画を観たのは半年以上も前だった。マジか。
読書に関してはもっと微妙な所だ。SFやライトノベルを読んでた時期もあるけど、就職してからはほとんど小説を読まなくなってしまった。今は仕事の困りごとも多いので、どちらかと言うと専門書やビジネス書を読むことが多いかもしれない。共通の話題としてはあまり使えない気がする。
映画や小説の趣味というのは結構人によって分かれる。ヒューマンドラマ好きもいればラブストーリー好きもいればミステリー好きもいればホラー好きもいる。邦画好きもいれば洋画好きもいればアニメ好きもいる。だからマッチングアプリのプロフィールなどで、単に「本が好きです」としか書いていない相手は結構困る。読むのは小説か? 村上春樹か? 伊坂幸太郎か? または専門書とかも読んだりするのか? 情報があるようでないに等しい。
自分は少し前に、マッチングした時に会話のネタになればと思って、好きな映画や小説の名前までプロフィールに書くことにした。けれども、自分からいいねも送るようにし始めたのに、まだほとんど誰ともマッチングしていない。一度、38歳の人からいいねが来たくらいだ。10歳も年上の人とやり取りするのは抵抗があったので、いいねを返すことはしなかった。
自分の需要のなさはあまり考えないことにして、もっと共通の話題にできそうなことを何かやろうと思った。とりあえず、デートに使えそうな店も全く知らないことだし、会社帰りにイタリアンの店に寄ってみることにした。ラーメンなど麺類は好きなので、パスタの旨い店を見つけたいというモチベーションもあった。
Googleマップで最寄りの店を探して、星が4以上の店に狙いを定めた。高級そうな店も多く出てきたので、なるべくお手頃そうな所で行く店を決めた。訪れたのは昔からやっているらしいイタリアンの店で、年配の人も来ているようだった。そこまでお洒落でもなさそうだけど、まあ手始めとしては良しとしておこう。
和風明太子のパスタを注文した。しばらくすると、前菜としてサラダとパンが出てきた。テーブルにはオリーブオイルやタバスコが置かれている。まあ普通のお店という所か。やがてメインの明太子パスタも来た。味は……、これも普通という感じ。
昔からやってる店だから評価が高かったのかな、なんて思いながら食べていると、会社帰りと思われる男女が店に入ってきた。初めは会社の同僚同士かと思っていたけれど、聞いているとどうも会話がぎこちないことに気付いた。
その男女は席に着くと、少しよそよそしくしながらメニューを選び、「今日は寒いですね~」「お仕事は忙しいんですか~」みたいな会話を始めた。これは多分……、いや間違いない、どう考えても「お見合い」だ。
気軽な気持ちでパスタを食べに来たら、お見合い真っ最中の人達に出会ってしまった。店の構造上、テーブルを仕切るものは無いので話は丸聞こえだ。思わず、普通に食べているふりをしながら聞き耳を立ててしまった。
けれども話を聞いていると、天気や仕事の話からあまり話題が膨らんでいないようだった。もう少しお互いに好きなこととか、相手が話したいことを探せばいいのではと思ったけれど、自分もいざ会話をしたらああなってしまうのかもしれない。特に相手の好みとかが分からない状態では。
お見合い中の二人の会話をもっと聞きたい気もしたけれど、長居をするのも変かと思って会計を済ませた。あの二人は多分、あれ以上発展することはなさそうだな……。
共通の趣味があることは結構大事に思えたので、もうちょっと映画を観たりしようと思った。少し前にAmazonプライムに入ったので、映画やドラマを観る環境はある。小説や漫画を読むなら、KindleやDMMとかも使った方がいいだろうか……。
<つづく>
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