100万回親ガチャリセマラしたねこ

あきや

本文

親ガチャリセマラはフィクションです。

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100万回も 親ガチャリセマラした 少女が いました。

100万回も しんで、 100万回も 生きたのです。

100万人の 人が、 その少女を かわいがり、

100万人の 人が、 その少女が しんだとき なきました。

少女は、 1回も なきませんでした。


あるとき、 少女は 芸術家の むすめでした。

芸術家の 年収は Eランクでした。

少女は 金にならない絵なんか だいきらいでした。

少女は 首をくくり 自殺リセットしました。

芸術家は ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て 大きな声で なきました。

そして 少女の 似顔絵を 描き 墓に 埋めました。


あるとき、 少女は 芸人の むすめでした。

芸人の 年収は  Eランクでした。

少女は 下らないギャグが だいきらいでした。

少女は 首をくくり 自殺リセットしました。

芸人は ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て 大きな声で なきました。

そして バイトで貯めた なけなしの貯金で 少女のお墓を建てました。


あるとき、 少女は アル中の むすめでした。

アル中は いつも 酒を飲み 何かあるたびに 少女を ぶちました。

完全に 毒親でした。

もちろん だいきらいです。

少女は 自殺リセットしました。

アル中は ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て 自分の愚かさを 嘆き 酒に 逃げました。


あるとき、 少女は 寂れた料理店の むすめでした。

料理店の 年収は Cランクでした。

少女は 原価率が高くて 売り上げがほとんど消える料理が

だいきらいでした。

少女は 首をくくり 自殺リセットしました。

店長は ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て 大きな声で なきました。

そして 少女が 美味しそうに食べていた オムライスを作り 仏壇に供えました。


あるとき、 少女は おまわりさんの むすめでした。

おまわりさんの 年収は Bランクでした。

少女は 権力を振りかざし 周りの人に 厳しくする おまわりさんが だいきらいでした。

少女は 首をくくり 自殺リセットしました。

おまわりさんは ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て 大きな声で なきました。

そして 少女が 厳しいしつけに 追い詰められていたことに 気付けなかった 自分を 深く 反省しました。


あるとき、 少女は お医者さんの むすめでした。

お医者さんは 特別なスキルが必要な 高度専門職です。

安定して高収入な お医者さんは Sランク(リセマラ終了ライン)です。

けれども そのお医者さんの 病院に 来る 患者さんは 少なく、 お医者さんは 儲かりませんでした。

なぜなら お医者さんは 小児科医なのですが、 最近 若者向けSNSで 親ガチャリセマラが 大バズりした 影響で 百万人近い 子供が 自殺してしまったからです。

そのお医者さんの 年収は 実質Dランクでした。

少女は 首をくくり 自殺リセットしました。

お医者さんは ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て どうにか助けようと 手を尽くしました。

けれども 手遅れでした。

お医者さんは 少女を 抱いて なきました。

そして 小児科医を やめて 精神科医に なりました。


あるとき、 少女は 起業家の むすめでした。

起業家の 年収は Sランクでした。

起業家は 少女と同じで お金が だいすきでした。

ある日、 起業家は インサイダー取引の容疑で 逮捕されました。

犯罪者として テレビや SNSで こっぴどく 叩かれました。

収入は なくなり、 莫大な 借金が 残りました。

少女は 首をくくり 自殺リセットしました。

それを聞いた 起業家は、

牢屋の中で なきました。


あるとき、 少女は ヤクザの むすめでした。

ヤクザは クスリの売買をして 大きな利益を 得ていました。

ヤクザの 年収は SSSランクでした。

少女は 犯罪者が だいきらいでした。

少女は 自殺リセットしました。

ヤクザは ぐらぐらの頭に なってしまった 少女を見て 大きな声でなきました。

ヤクザは 若い衆を集めて 大きな葬式を 上げました。


あるとき、 少女は メンヘラの むすめでした。

メンヘラの 年収は ありませんでした。

しかも メンヘラは あまり 少女に 構ってあげず、

かわりに 手首に リスカ跡を作り いつも SNSで 匂わせていました。

少女は 構ってちゃんが だいきらいでした。

少女は 自殺リセットしました。

メンヘラは 自分と違い パッと死んでしまった 少女を見て 「ごめん」と思い なきました。


少女は 死ぬのなんか 平気だったのです。


あるとき、 少女は だれのむすめでも ありませんでした。

のらねこだったのです。

親ガチャでは ランクを付けられません。

ねこは はじめて 人生の 運ゲー感から 解放されました。

ねこは 自由に 生きてみることにしました。

ネズミや虫を 狩って 食べ、

車のエンジンルームに 潜り込み 寒さをしのぎました。

その生活は 自由でしたが とても大変でした。


ある日 地面に おさかなが 落ちていました。

おさかなは 水の中を 泳ぐものなので 地面に 落ちているのは おかしなことです。

けれども ねこは とても お腹が すいていました。

なので おさかなを 食べました。


次の日も 同じところに おさかなが 落ちていました。

ねこは また おさかなを 食べました。

その様子を 眺める 女の人が いました。

「きみも こどくなの?」

女の人は ねこに 話しかけました。

「にゃあ」

ねこは 人間の言葉を 話せませんでした。


次の日も 同じところに おさかなが 落ちていました。

ねこは また おさかなを 食べました。

「もし 良かったら うちに 住まない?」

女の人が 言いました。

「にゃあ」

「ほら 寒いでしょう。

 こっちに おいで。」

「にゃあ」

ねこは 女の人の 飼いねこに なりました。


その日から ねこは お腹がすいたら 餌をもらい 眠くなったら 暖かいクッションで 丸くなって 寝るように なりました。

女の人は ねこのことを とてもよく お世話しました。

けれども ねこは 「そんなこと 関係ないね」 と言わんばかりの 素っ気ない顔を していました。

「君は なんだか あの子に 似ているね」

女の人は 言いました。


ねこは 栄養たっぷりの キャットフードを たくさん食べて どんどん 大きくなりました。

けれども 女の人は どんどん 瘦せ細っていきました。

なぜなら 女の人は 何も 食べていなかったからです。

女の人は ねこに 言いました。

「もうすぐ 私は 動かなくなると思う。

 そうしたら 君は ここを出て 自由に 生きるんだよ。

 君は のらねこなんだから。」

ねこは 食べるのに 夢中で 女の人の 言うことを 聞いていませんでした。

「にゃあ」

ねこは 食べ終わると 満足そうに 鳴きました。


ある日、 女の人は、 ねこの となりで、 しずかに 動かなくなっていました。


「にゃあ」

ねこは お腹がすいたので 女の人に エサを ねだりました。

けれども 女の人は 起きませんでした。

ねこは お腹がすいて 仕方がなかったので、

開いている窓から 外に出て エサを探しました。

けれども 外は とても寒く エサも なかなか 見つかりませんでした。

ねこは 女の人の 家に 戻りました。

女の人は まだ 寝ていました。

「にゃあ」

ねこは 女の人を 起こそうと 激しく じゃれつきました。

あんまり 激しく じゃれついたので 女の人の 服が はだけ、 長袖が まくりあげられました。

それでも 女の人は 起きませんでした。

そこで ようやく ねこは 気が付きました。


ねこは、 はじめて なきました。

夜になって、 朝になって、 また 夜になって、 朝になって、 ねこは 100万回もなきました。




「すみませーん!

 警察でーす!

 ずっとねこが騒いでるみたいですけどー!

 大丈夫ですかー?

 入りますよー?」

何日かして おまわりさんが 女の人の家に やってきました。

おまわりさんは 倒れている女の人を 見て ギョッとしました。

「大変だ、 早く 救急車を 呼ばないと!」

おまわりさんは 大慌てで 119番に 電話しました。

「救急です。

 私が 来たときには 既に 倒れていました。

 いつから 倒れていたかは わかりません。

 はい 脈は ありますし 気道も 確保されているようです。

 特に 外傷は 見付かりません。

 場所は……」

緊急電話を 終えると、

おまわりさんは 女の人の となりで ないている ねこに 話しかけました。

「きみは この人の ねこかい?」

「にゃあ」

ねこは ずっと なき続けていました。

「安心していいよ。

 おじさんは 困っている人を 助けるのが 仕事だからね。

 どんな異変も 見逃さないように こうして いつも 見回りをしてるんだ。

 他の大人たちも 同じさ。

 みんな 困ってる人や 愛する家族のために

 この社会で 自分にできることを してるんだ。

 だから 大丈夫だよ。」

しばらくして サイレンの音が 聞こえてきました。

そして 家の中に 救急隊員が 入ってきて 女の人を 担架に乗せ 運び出しました。


病院では 倒れた女の人を 助けるために お医者さんや 看護師さんが 待っていました。

すぐに 設備の整った ベッドに 寝かされ 点滴を 打たれ 適切な 診察と 治療が 行われました。

そのおかげで 女の人は すこしずつ 回復していきました。


「どうして 栄養失調で 倒れるまで 食べなかったんですか?」

お医者さんが 女の人に 聞きました。

「それは……」

女の人は 黙り込んでしまいました。

「私には 話せませんか?」

「いえ、 そういうことじゃなくて。

 ただ 変な話なので……」

お医者さんは 優しく微笑み 言いました。

「どんなことでもいいんです。

 話してください。」

「……はい。

 実は 最近 一人娘を 亡くしたんです。

 それも 自殺で……

 両親も 彼も 誰も望んでないのに 私は 勝手に その子を 産んでしまいました。

 その子には パパと 会わせてあげることも できませんでした。

 しかも 私は 自分のことばっかりで

 あの子の 異変に 気付いてあげられなくて。

 そんなだから きっと あの子も 私なんかの 子として 生まれることは 望んでませんでした。

 だから あんなことを…… 

 私は 私の エゴだけで 命を産んだ 最低の 親です……!

 子を産む資格なんて なかったんです!

 あの子は 私が 産んで 私が 殺したようなものです!

 それが 申し訳なくて。

 ずっと……」

女の人の 言葉は 段々と 支離滅裂になり 最後は 泣き崩れて 続けられませんでした。

お医者さんは 優しく ゆっくりと 話し始めました。

「……その気持ち、 少しは 分かる気がします。

 実は 私も むすめを 自殺で 亡くしているんです。

 きっと 子を産む資格なんて 私にも ありません。

 ……そう思うと 本当に 悲しい気持ちに なります。

 ですが こんな重い責任なんて 誰にも 負えませんよ。

 すべてを創ったという 神様ですら たくさんの人たちから 恨まれているんですから。

 だから あなたも そんなに 自分だけを 責め続けないでください。」

「……ありがとうございます。」

「食事をする気分には なれませんでしたか?」

「……最近 うちの 近くに のらねこが 来るように なったんです。

 いつも 寒そうに エサを 探してしていて なんだか かわいそうで。

 本当は いけないと 思うんですけど、

 いつも そのねこが 通る道に さかなを 置いてみました。

 そうすると のらねこは 私を じっと見ながら そのさかなを 食べるんです。

 その様子が なんだか あの子に似てて。

 きっと このねこは あの子の 生まれ変わりだと そう感じました。

 ……変ですよね。」

「いいえ。

 それで そのねこを 飼うことにしたんですか?」

「はい。

 今度こそ ちゃんと 面倒を見ようって。

 エサを いっぱい買ってきて 食べさせました。

 お金は ありませんでしたけど 自分の食費を 削って。

 自分の体調が 悪くなってるのは 気付いてました。

 でも 罪悪感に 苦しみながら 生きるよりは、

 あの子のためと 思って 死ねるなら その方が……」

「……どうも 考え過ぎてしまうようですね。

 少し お薬を 出しておきます。

 まずは それを飲んで 心身を休めることだけ 考えてください。」

「ありがとうございます。

 でも 私 お金 ないんですけど……」

「大丈夫ですよ。

 あなたのように 困っている人を 助けるために 社会保障制度は あるんです。

 安心してください。

 お大事に。」

お医者さんは 優しい顔で そう言いました。


女の人は 自立支援医療制度と 生活保護を 受けました。

ねこには 人権が ありませんが 女の人は 人間なので 最低限の生活が まかなえるだけの 収入が 保障されているのです。

女の人は 生活保護費から こっそり キャットフードを 買い ねこに あげました。

ねこと 触れ合ううちに 女の人の 心は 少しずつ 安定してきました。


「人と 触れ合う機会も 持つといいでしょう」

女の人は お医者さんから そうアドバイスされました。

そこで 女の人は 猫カフェで 行われる 街コンへ 行くことにしました。

女性は 参加費無料です。

そこで すぐに オスねこを飼っている チャラ男と 仲良くなりました。

そして そのチャラ男と 一緒に 住むように なりました。

女の人は 実は 恋愛強者でした。


同棲して 一年が 経ちました。

「あのさ。

 そろそろ いいんじゃないかな。」

チャラ男が 言いました。

「何が?」

「俺たちも 結婚して 子供作ったりとか……」

「それはダメ!」

女の人は きっぱりと 言いました。

「なんだよ、 急に。

 どうした?」

「それは……」

女の人は 過去の 辛い経験を 話しました。

「……わかったよ。

 そういうことなら 子供は やめておこう。

 ただ 一つだけ 言わせてくれ。

 過去と 今は 違う。

 俺は お前と 子供を 絶対に 幸せにする。

 それだけは 覚えておいてくれ。」

チャラ男は チャラチャラしているわりに 紳士でした。

「にゃあ」

その様子を見て ねこは 一声 鳴きました。


ねこは チャラ男の飼っている オスねこと 一緒に 仲良く 寝るように なりました。

そうして しばらくして こねこが 産まれました。

「オイオイ なんか 増えてるじゃねーか!

 いつの間に ヤリやがった?

 まったく こいつら 誰の稼ぎで エサ食えると 思ってんだよ。

 俺の年収 そんなに 良くねーぞ!」

「いいじゃない。

 このねこたち 幸せそうだよ。

 エサ代くらい なんとかなるでしょ。」

「そうだけどさ。

 ……それならさ 俺たちだって 幸せになっても いいんじゃないか?」

「……」

女の人は 考え込みました。

「にゃあ」

そのとき ねこが 幸せそうな声で 鳴きました。

「……そうかもね」


そうして 女の人は 結婚し 女の子を 生みました。

貧困家庭だったので 教育費は あまり かけられませんでしたが、

その分 女の人は 教育法を ネットで 一生懸命に 勉強しました。

おかげで 女の子は すくすくと 立派に 育ちました。

「にゃあ」

その様子を見て ねこは 満足そうに 鳴きました。




ある日、 ねこは、 女の人の となりで、 しずかに うごかなくなりました。


ねこは もう、 けっして 生きかえりませんでした。

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