第11話 休みをください

 休日、子どもはなぜか学校に行く日よりも早く起きてくることが多い。


家族が起きてくる前にある程度家事を終わらせたいが、だいたい途中で子どもが起きてくる。


「ねぇねぇお母さん」


この子どもの呼びかけに何度も対応しながら細切れに家事を進める。


そうこうしている間に、家族全員起床する。


家事をそこそこに終え、朝食の準備にかかる。


そして食べ終えたらすぐに後片付けを済ませ、残った家事を進める。


終わってやっとひと息つく頃、早く公園に行きたいと子どもに急かされる。


休憩もそこそこに家族で出かけ、帰ってきたらすぐ昼食の支度。


食べ終えて後片付けを済ませる。


家族がまったりしている間に、夕飯の食材やら日用品の買い出しに行き、戻ってきたら子どもの相手をしたり、家族で過ごす。


そうこうしている間にまた夕飯の支度、片付け…


子どもをお風呂に入れ、歯磨きを手伝い、

寝かしつける。


こうして、休日が終わる。


寝かしつけたあと、本当は趣味の時間に使いたいが、もうそのエネルギーは残っていない。

気持ちはやりたいのに、身体がついていけずに諦める。

気持ちと身体が噛み合わないことでモヤモヤが残る。


家族が元気に過ごせることはありがたいことでもあるが、正直細切れに隙間時間にちょこちょこ休憩する程度だから、休んだ気がしない。


頭を空っぽにして自由に休日を過ごせることは滅多にない。


少し休んだら、あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ…

と休憩しつつも次のタスクが頭をよぎる。


買い物を済ませた帰り道、1人車を運転していてふと思う。


休みがほしい。

人間を休む時間がほしい。

いったんすべてのことから離れて。

学校を卒業してから無職の期間はない。

ずっと働いてきた、働いている。

社会の歯車の一部として、ずっと動き続けてる。

生きるために働くことは必須だ。

だから働く。


でも時々、どうしようもなく長い休みをください。


と、信号待ち、空を見上げて言いたくなる。

目に見えない何かに向かってお願いしたくなる。


休みをください、と。

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