『ラスト・オムライス』

やましん(テンパー)

『ラスト・オムライス』

 

『これは、あからさまな、フィクションです。すべて、現実とは無関係です。科学的データはありません。雰囲気です。』


          🌏💦      ●~~~~~~~

               


 まさかと誰しもが思ったのですが、地球に月の3分の1ほどの小惑星が突然、衝突することになったのです。


 太陽側から、急に現れて、うまく隠れて来たらしく、で、発見も遅れたらしいです。


 『そんな、でっかいもの、なんで見落とすんだよお。』


 と、地球政府の宇宙安全相は、袋叩きになり、辞任しましたが、こんどばかりは、辞職してOKというわけでもなし。


 出身母体の力も、役に立たない。


 実際は、太陽系近傍にまで、ワープしてきたらしいので、気が付くはずもなかったらしいです。


 といって、どうするわけにもゆかないですよお。


 この小惑星、異常に速度が速い。


 光速の60%近く、くらいは、出ているんだとか。


 自然現象ではないのではないか、とも言われたって、いまさらどうにもならないですよね。


 お手上げである。


 あとは、宇宙的奇跡を待つのみです。


 もうすぐそこまで来ている。



 町内では名高い『おばちゃん食堂』では、『ラスト・オムライス』が作られました。


 数量限定。


 衝突するとお終い。


 おばちゃんは、ほんの冗談のつもりだったのですが、お客さんが押し寄せました。


 行列が出来て、大騒ぎになりました。


 でも、だれも、どうしようもないから、そのままです。


 相手の速度が速いし、大きいので、核攻撃で軌道を変えるっといっても、迎え撃って当たるかどうかもわからないし、当たったって、効果ないかもしれない。


 それでも、いくつかの元超大国などは、めずらしく共同して、各自秘密に開発した超超超超超音速ミサイルに核弾頭を詰め込んで、小惑星に打ち込みました。


 が、衝突軌道は、全然、変わらない。


 あまりに、気が付くのが遅すぎました。


 映画のようには、行かないのです。



 『おばちゃん、まだ、オムライス、ある?』


 最後にやってきた、やましんさんは、恐る恐る尋ねました。


 他の人は、もう時間切れと思い、それぞれにいるべき場所に帰って行きました。


 『あと、一個ならできる。まっといで。でも、間に合わないかも。あ、この、《天国パック》にしようか。おたがい、ひとりぼっちだからね。』


 ひとりぼっちと言っても、奥さんがいるんですが、今、どこにいるかは不明です。電話・通信もだめになってます。


 『て、天国ぱっく?』


 『うん。なんかさあ、知らない、へんなおじさんが、三個だけ、置いてったんだ。地球が壊れても平気な入れ物だって。あと一個残ってる。』


 『ふうん。じゃあ、人類が滅んでも、オム・ライスは残るってわけかい。』


 『まさかね。まあ、せっかくだから、大急ぎで作る。』


 おばちゃんは、猛スピードで、名物のオムライスを作り上げました。


 そうして、その『天国パック』に、封入しました。


 『あいよ。500ドリムね。』


 『ちゃっかりとるんだ。なんだか、棺桶みたいな箱だなあ。』


 『あたりまえよお。三途の川の渡し賃さ。』


 『地球が滅んでも、三途の川は残るのかい?』


 『さあ。まあ、すぐにわかるさ。』


 

 間もなく、どおかああ~~~~ん、と、衝撃が来たような気はしましたが、気が付くと、目の前には、熱々のオム・ライスがあります。


 『なんだったのかしら。』


 そこは、大きな西洋型棺桶の中みたいです。


 『おわ! まさか、あの箱?』


 小窓があって、外が見えています。


 何かの大小の破片が飛び交っていますが、棺桶はそこから離脱しようとしているようでした。


 そこに、アナウンスが、入りました。


 『お待たせいたしましたあ。本船は、《地球終末用棺桶型小型脱出用ポッド》、です。たまたま持っていたかた、一番近くにいた方を、この船内に吸収し、適当な場所にお送りいたします。人間なら定員二名。ほか、種族によります。ここでは、下側の別室に、もうおひとりがいます。ご質問は?』


 『あの、地球は?』


 『破壊しましたあ。』


 『しました?』


 『はい、地球は、残念ながら、深く病んでおりました。再生不能で、宇宙にとって有害と判断したので、切除処分されました。そこで、いくらか地球生物に生き残っていただくことも必要と思い、我々のエージェントが、救出ポッドを、適当に、ばらまきました。無差別選別ですよ。偉い人だからとか、一切、ありません。我々から見たら、地球人は、極めて原始的初期文明生物ですから。でも、実際、いろんな生物が保存されましたあ。あ、あなたに、通信が来ています。特に許可いたします。』


 『じゅわじゅあ~~~~、お~~~~い。やましんさん、こちら、『ねこママの店』にゃん。・・連さんは、みんなここに入ってるにゃあ、安心してね。じゃあね。(《やましい~~ん、がんばれ~~。》とかの、沢山の声が聞こえました。)お達者でえ・え・ええ~~~~~~~。じゃわ、じゃわ。ぷつ。』


 『おわわわあ。ママ、どこに行くの?』


 『****こ::***の星にゃ・・・・・・そこなら・・・・るかも。』


 『通信不能域に入りましたあ。』


 『なんだそりゃあ。ねこママはどこに行ったの?ぼくは、どこに行く?』


 『あの生き物たちは、大変珍しいしいので、《宇宙生物博物館》に行きます。でも、あなたの選択肢は、人類優待サービスで、よっつもありますよお。まあ、地球の支配種ですから敬意を表してです。まず我々の母星、『ラスト・オム・ライス』。そこで研究用の個体として、大切に扱います。幸せに、いろんな実験を体験できます。次が、『資源惑星Q』。そこで、生涯、働くことができますし、身体は強化されて、寿命は5倍くらいになりますよお。見た目は、まあ、大きなゴリラさんとか、怪獣さんとかけ合わせたような姿になりますが。みっつめは、あの世です。これは、我々も、定義出きないですが、この脱出ポッド自体が自爆します。あとひとつが、その『宇宙生物博物館』です。常設展示されます。記憶は消去します。檻の中の展示品です。大切に扱います。どれでも、ご自由に。』


 『その、下の人って、おばちゃんですか?』


 『ああ、最後の瞬間にいっしょにいた人ですよ。だいたい、大切な人と、いっしょにいるはずですから。』


 『なんか、むったくたの選択ですね。あなたたちに、そんな権限があるのかあ?!』


 『お言葉ですが、そこまで切迫させたのは、あなた方、地球人類ですから。随分、地球政府には、前から勧告してたのですよ。産業革命直後からね。彼らは、まったく、公表しなかったけれど。なので、まあ、あきらめてください。30分で選択してください、下の方とお話しますか? 爆破の際は、片方だけ切り離して爆破も可能ですし、それぞれ別の目的地に、向かえますから、ご心配なく。心置きなくお決めください。あ、そのお食事はしてくださいね、それが、最後の地球食ですよお。あとは、体外電磁注入方式になりますから、食べる機能は低下します。なに、生活習慣病からも解放され、健康になります。自決以外は、地球にいるより、はるかに長生きします。』



 ぼくは、いつもの夢だろうと思いました。



 しかし、この夢は、覚めなかったのです。



 ぼくは、選択しなければ、ならなくなりました。



 おばちゃんのオムライスは、おいしい。


 すると、おばちゃんと相談する前に、突然、下半分が離脱するのが見えました。


 しばらく、離れた後、それは、消滅したのです。


 おばちゃんは、自決したようでした。


 地球が無くても、あの、なつかしい、おじちゃんに、また、おばちゃんは、会えるのかなあ?



 難しい、決断です。



 おや、簡単ですか?


 




      ****************




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『ラスト・オムライス』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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