短編小説と音楽はよく似ていると思う。
耳に心地よい旋律が繰り返し聴こえてくる。それは物語の序章であり、メインテーマであるわけで。
ハッとさせる変調が入り、聴き手はピアノの鍵盤を這う指から目が離せなくなる。耳が安心できる場所を求める。
どうなる? どうする?
不安になる変調の中に、予想していた、期待していた、あの旋律が見つかる。予想していた通りに、期待していた通りに。
この短編小説には予想された期待通りの音楽を耳にした時のような安心感があります。
そして何よりももっと聴いていたいと思わせるラストが、これがまたいい旋律を奏でてくれます。ぜひ、主人公の主観に入り込んで読んでみましょう。