クラスメイトに主人公的キャラ!?・・・ま、空気の俺には関係ありませんけど・・・って、あれ?

黄色いキツネ

第1話 俺のクラスに主人公的キャラがいる




 いきなりだけど・・・

 普通さ、現実にいるわけねえだろと思うわけじゃん?


 美人な幼馴染に、可愛い義妹、異様になつく後輩etc…

 そして、何かと絡んでくる金持ちのいけ好かない男子や、陽気で3枚目の友人etc…


 そんな奴らが一同に集まる、漫画やラノベ、美少女ゲームの主人公のような境遇の人間なんて。


 ・・・・・


 しかし、いたんですよ・・・


 俺の目の前に・・・


 いや、正確に言えば俺のクラスメイトに・・・


 そいつは、辰巳流星たつみりゅうせい

 その男の境遇が、まさに先に挙げた境遇そのものなのだ。


 名前まで主人公っぽいし・・・


 ・・・・・ふん!


 羨ましくなんてないもん!!


 絶対に羨ましくなんてないんだからね!!


 と、本心では全く思っていないことを、ツンデレ風に悔しさを滲ませたりなんかしてみちゃったりした俺・佐藤海さとうかい、高校2年生だ。


 別に自分の名前は嫌いじゃないが、主人公くんの名前と比べれば・・・

 まあ普通。


 って、俺の名前の事なんてどうでもいい。


 そんな事よりもだ。


 もちろん彼は主人公の境遇であるが故に・・・

 ザ・鈍感系主人公である。


 ・・・もう、お決まりだよね。


 恵まれた境遇の主人公=鈍感という図式は、もはや教科書に載るほど公然の事実なのだ。(載ってないけど)


 もちろん最初にも述べたように、主人公であるが如く辰巳にはちゃんと幼馴染と義妹が付属されている。


 高校生になって付き合いのある幼馴染というのも、普通なら中々居るものではないだろう・・・

 しかも美人であるとなれば、なおさらの事・・・


 更にはそれ以上不思議な事に、義妹は当然の如く同じ学年である。

 まあクラスは違うけど・・・


 それこそ、義妹自体がそう簡単に出来る事ではないのに、同じ学校の同じ学年にいるとかさぁ・・・


 もう本当、物語以外ありえないよな・・・


 そんな幼馴染も義妹も主人公辰巳に構ってもらうために、よく彼のところに行っているのだが本人はどこ吹く風である。


 そして、陽気な3枚目キャラであり“なぜそんな事まで知っている!?”というような情報を辰巳に与える、意外と重要な役目を担っているのは松坂渉まつざかわたる


 本人はモテないが、なぜか色んな女性の情報を持っていて主人公に与える奴がいるというのも鉄板だよね。


 そして、なぜかしら女性が寄ってくる主人公気質の辰巳を目の敵にしているのが、日本でも有数の財閥である西園寺家の御曹司・西園寺正宗。


 まあ最近の書籍やゲームなどでは、うざい御曹司が主人公に絡むというのは減ってきているようだが。

 でも、半端ではない金持ちがクラスメイトというのも定番だよね。


 そんな、お決まりを集めたようなのが、俺の学校には存在するのだ。


 ・・・いや、これは俺の願望とか読んだ書籍の内容とかじゃなく、本当に俺の目の前に広がる光景でリアルな事なのだ。


 いや、ほんと・・・

 なんだこれ、と思いたくもなるよね・・・


 とは言いつつも、別に俺は言うほど大して気にしてないし、彼らの輪の中に入るつもりなんてさらさらない。


 主人公辰巳達は主人公辰巳達で勝手にやっていて下さい。

 と、常に我関せずなのである。


 あ、ちなみに・・・

 俺はボッチでも陰キャでもないからな?


 友人は普通にいるし毎日を楽しんでいる。

 だから、主人公達と仲良くなる必要はないというだけ。


 だって、物語の主人公に関わる人って、何かしらと大変じゃん?

 必ず色んな事が起こるし、それに巻き込まれるしで・・・


 俺に波乱万丈な人生なんていらん!

 俺は平々凡々に過ごせればいいのだ!


 だから、俺はモブでいい。

 というよりも、モブでいたいのだ!


 いやそれどころか、彼らの物語の中では俺はモブですらなくていいのだ!

 だってモブと言ってしまえば、モブというキャラとして存在するわけだしね。


 だからそう、俺は空気・・・

 彼らの物語の中では、俺は空気になるのだ・・・


 俺は目立たずひっそりと、毎日を楽しく過ごせればいいんです。


 だから俺の人生には、彼らと関わるという選択肢は存在しない。


 その目立たぬ人生の中で、もちろん彼女も欲しいとは思う。

 ・・・思いはするが、主人公の周りにいるような高嶺の花なんかじゃなくていいのだ。


 むしろ彼女が出来たとしても、俺と同じモブ・・・いや、彼らの物語では俺と同じ空気の女の子でいいのだ。

 だってその方が騒がれなくて済むしねぇ。


 彼女が出来なくても、それはまあしゃあない。


 なんであろうと、何度も言うが彼らの物語の中に俺は登場しない人物でありたいのである!


 あ、ちなみに・・・

 あまりにも辰巳の境遇が物語の主人公っぽいから、俺が勝手に彼らの物語と言ってるだけだからな?


 彼が本当に物語の主人公かどうかは知ったこっちゃないのだ。


 さっきも言ったが、とにかく・・・


 目立たず、楽しく、ひっそりと・・・

 これが俺のモットーである。


 だからこれからも、目立つ人物との接点は持たずに生きていく所存。


 と、そんなくだらない事を考えている間に、気が付けば放課後である。


 そして今日も今日とて、主人公辰巳様の所には例の幼馴染が話しかけていた。


 ストレートロングの整った顔立ち、裏表のない性格で何よりも笑った顔が可愛い女の子。

 ・・・まあ主人公ヒロインなんて、俺は全く関わりたくないし興味もないけどね。


 そう思いつつも、彼らの話が耳に入ってくる。


「流星くん、今日も部活なんだよね?」

「ああ、うん。特に今は試合も近いし、頑張らないとさ」


 そう。

 主人公様には珍しく、辰巳は部活組である。


 サッカー部に所属し、ポジションはサイドバックらしい。

 それも主人公にしては珍しいよね。


 いや、サイドバックが重要なのはわかってるよ?

 ただ主人公様がサッカー部に所属しているのならば、トップ下かエースストライカーというのは相場が決まっているのだ。


 そこから考えたら、珍しいって事。


 まあそもそも、普通なら主人公といえば・・・

 過去に部活をやっていたけど現在は入っていないとか、もしくは全く部活はやってこなかったかが定番だろう。


 だから、主人公が部活に入っている事自体が非常に珍しいと言える。


 いやまあ、俺が勝手に辰巳を主人公と言っているだけで、現実なら別に部活に入っているのは珍しくも何ともないだろうけど・・・


 そんなどうでもいいことを、ボケらっとしながら考えつつ彼らの会話を聞いていた。


「そっか、応援してるから頑張ってね!」

「うん、ありがとう」


 あんなに可愛い幼馴染から応援されたら、頑張らざるを得ないよなぁ。


 てか俺には関係ないし、彼らのやり取りなんて見ていてもしゃあない。


 そう思って、俺が帰るために立ち上がると・・・


「あ!かいくん、帰るの?一緒に帰ろう♪」

「おう!」


 さてさて、じゃあ帰りますかぁ。


 ・・・・・


 って、あれ?なんで?


 おかしくね?


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