消毒

前島莉乃side


アリアが待っている。

違う、アリアに待っていてもらいたい。

私が目覚めるのを...私の目がアリアと合うのを。

だから早く起きないと...!

首を絞められて眠っている場合じゃない。

早く!早く...!早く。


「ん...あ、りあ」


「あ、起きた?良かった。

じゃあ行くから。」


「待って!!私のこと見ててくれた...の?」


「まぁね。倒れてるあんたのこと見つけて運んだからさ。」


「ありがとう!アリアに運んでもらった!

アリアに触ってもらえたんだ!」


アリアは優しくて可愛い子。

やっぱり大好きだ、愛してる。


「巡、どうした?」


「横田さんは自殺したよ。見てたからわかる。悔無も見てた。」


「そうなんだ。良かった...。」


巡は生かしておいては危険だった。

私は殺されかけたんだから。

自分から死んだなんて馬鹿なこと、

あの流れでどうして。

ま、どうでもいいんだけど。


「悔無はどこに?」


「色々してる。」


もしかして。

いや、アリアに限ってそんなことしないよね。

してたって愛しているんだけど。

悔無に関しては臆病極まりない子だったし、

巡の自殺というのはそのまま受け入れておこう。


「アリア、ありがとう。」


心から嬉しかった。

もしかしたら嫌われてるかもーなんて思っていたから、助けてもらえたことや心配してくれたことがとても嬉しかった。


「じゃあね。」


アリアは行ってしまったけれど、今はそれでもいい。ただ、この喜びを噛み締めるんだ。


ガラガラと保健室の扉が開いた。


「莉乃…。お話いいですか?いいですよね。

最近、可笑しなことが多く無いですか。

いいえ、多いはずですよね。

後野アリアについて話したいことがあるのだけれど。」


「いいよ。誰もいないし聞いてあげる。」


「感謝します。」






雛乃は少し黙ってから口を開いた。


「後野アリアが香奈を殺しました。」


「そう。」


「あの人は異常です。

私も独占欲が強い方ではありますが、

あの人は桁違いです。」


「その...独占欲って...誰に?」


「貴方に!!香奈は。私の香奈は何故か貴方を愛していた。でも、後野アリアは香奈を殺し、私のことも脅した!

あの人から離れて莉乃。

貴方のことは殺したい、でも、本当には殺せない。あの人はそれが出来てしまう異常者なの。お願い、香奈のためにも離れて!!」


「私がいつ、アリアより香奈の方が大事だと言ったの?香奈のためにアリアから離れる?

そんなことするはずない。

アリアは私だけのもの、誰にも渡さないし

アリアの罪なら受け入れる!」


「次元が違うのです!

貴方はまだ人を殺していない、、

貴方と悔無はあちらに行ってはダメです!

腐っても香奈と私の友人でしょう?」


「ねぇ、私しつこい人嫌いなんだけど。

私がアリアと違う次元?

そんなこと許せない、許さない。

そんなこと言った貴方も貴方が愛する香奈も。何で大人しくアリアに殺されてくれなかったの?何でこの世に執着したの?」


「死んだら私は地獄に行っちゃう!

香奈と同じところに行けない!!!」


「じゃあ生きてても違うところにいるし

そもそも香奈が天国にいるはずないじゃん。

あんな自分勝手なやつ。」


保健室には様々な危険なものがある。

鋏や薬品、その他諸々。

私はその中で消毒液を手に取った。

キャップの付いている部分を回して取って

雛乃の口を強引に開ける。


「ひゃ...め..へ」


開かれた口でモニョモニョとやめてと言った雛乃だが、生憎私は許すつもりはない。

そんなに優しい常識的な人間じゃないから。


「さよなら。」


私の初めての殺人の道具がまさか液体になるなんて思ってもみなかった。


雛乃は喉を掻きむしり救いを求めて私を恨めしそうに見つめた。


「....ぁ。」


掻きむしりすぎて血塗れの喉から搾り出された声は言葉になどならず掠れ果てていた。


それをずっとただ眺めているとピクリとも動かなくなった雛乃が無惨に転がっていた。

アリアのことを悪く言う菌を消毒してやった。


「悔無に...連絡でもするか。

アリアのことが大切なら私のことも助けてくれるよね。きっと。」

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