初対面の彼女には感情が見えない
リウクス
感情が見える男、感情の見えない彼女
俺はある日を境に万物の感情が読めるようになっていた。
感情が読めるといっても、実際に精巧な読心ができるというわけではなく、感情の色が視覚的に判別できるというだけのことなのだが。
怒っている人には赤黒く燻っているような色が、悲しんでいる人には黒く淀んだ青色が、絶望している人には全てを飲み込むような黒色が見えるといったように、相手の感情がそのまま色に反映されて、俺の瞳に映し出されるのだ。
もちろんそれは例外なく人間以外の生物、時には無生物にも通用し、犬でも、猫でも、誰かが使い古した鉛筆にも、そこに宿った感情の色が見えることがある。
また時には、強く鋭い感情が具体的な形となって顕在化することもある。例えば、殺意に溢れた人間の周囲に刃物のイメージが浮かんで見えるといったように。
医者によれば、これは共感覚というもので、文字を読んだ時や音楽を聴いた時などに、受け取ったそのままの情報に加えて、無意識にそこから想起される色や形、オーラようなものを感じる知覚現象とのことらしい。また、それによって物事を印象深く記憶することが可能であるとか。
そして、俺は脳に強い衝撃を受けたことで、障害が生じ、この知覚のうち視覚的な部分を人一倍敏感に感じ取るようになってしまったとのことだ。
正直、最初は便利なものだと思っていた。
人の顔を見れば、相手が自分に何を望んでいるのかが大体は分かるし、常に他人の顔色を伺っていれば厄介ごとに巻き込まれることもないからだ。
しかし、四六時中人間の感情を観察するというのは、やはり精神衛生上良いものではなかった.。
繕った笑顔の裏に透けて見える悪意や、内側で膨れ上がる憎悪を、直に目の当たりにする必要があったからだ。
それらは物理的な暴力以上に攻撃的で、俺の心は次第に蝕まれていき、4年経つ頃にはすっかり精神が疲弊してしまっていた。
そして、ついには仕事に支障をきたすようになったため、上司からは一定期間の休職を言い渡された。
だから俺は今、ひたすら家に篭り、人の感情を見ないようにして生活している。
生の人間でなくとも、感情が見えることに変わりはないため、テレビをつけることもできない。映画やドラマも、出演者がよっぽど優秀な役者でもなければ、その表情と周囲に滲む色に齟齬が生じて集中できない。
簡潔に言えば、俺は今人間社会からほぼ完全に隔離されている。
しかし、人間というのは不便なもので、孤独に耐性のない人間がある程度の期間閉鎖的な空間で虚無を体感していると病んでしまい、結果的に鬱へと繋がる可能性がある。
俺もまた、1ヶ月以上薄暗い部屋で一人、必要最低限の暮らしのみ営んでいたため、生きている意味を見出せず、憂鬱になっていた。なんなら自殺を考えたことだってもある。
人間に感情なんてなければいいのに。
そう思うほどに、俺は感情というものの存在を呪っていた。
せめて魚のように、ただ繁栄のためだけに生きて、本能的な欲求に従うだけの生き物だったならばどれだけ楽だったか。
もっとも、俺にも何か幸せな記憶があれば、感情というものに前向きな意味を見出せたのかもしれないが、生憎、俺には4年以上前の記憶がない。
脳に強い衝撃を受けた時、言い換えれば、俺は事故に遭った日から1年の間昏睡状態に陥り、その間に記憶を失ってしまっていたのだ。
だから、感覚的に幸せというものがどういったものなのかを理解していても、その当事者ではないため気持ちは分からない。
俺の心にはただただ毒素だけが溜まっていく一方だった。
そして、休職から1ヶ月と2週間ほど経過した今、俺はその毒抜きをするために、水族館へと足を運ぶことにした。
そこには自分に悪意や憎悪を向ける生き物はいないから。
できるだけ客の少ない、残り数日で閉館する寂れた水族館を選び、営業時間ぎりぎりを狙った。
入館ゲートでは帽子を目深にかぶった高齢の男性スタッフが一人孤独にチケットをもぎっていたのだが、俺はそれを横目に通り過ぎつつも、彼の感情を目視していた。
彼の表情は疲れているように思われたが、その内面にはある種誇りのようなものが感じられた。
寂れた水族館にここまで献身的な従業員がいたことには少し驚いたが、今までも表面上からは読み取れないような感情を幾度となく目撃したことがあるため「そんなこともあるか」と気にかけず、そのまま奥へと歩みを進めてメインの大水槽へと向かった。
大水槽といっても、そのスペースをすっかり持て余してしまっている状態で、展示されている魚の種類も、両手で数えられる程度だった。
光を反射した水面がカーペット敷きの床の上でゆらゆらと揺れているが、そこに魚の影はほとんどない。
しかし、どの魚も満足気に泳いでいる。
きっと数は少なくとも、丁寧な飼育が施されているのだろうと、俺は感じた。
それからさらに奥へと足を運び、特にめぼしい魚が生息しているわけでもない海中トンネルを抜けると、不気味なほどに薄暗い、小さなブースに辿り着いた。
青、紫、緑など、様々に彩られたクラゲが展示されている。
これも数は少ないが、彼らが放つ光に淀んだ何かを感じることはなかった。
ちなみに、ここまでに自分以外の客を誰一人として見ていない。
入り口で「閉館のお知らせ」と書かれたA4用紙の貼り紙が大量に見受けられたため、そんな水族館に人が寄り付かないのも頷けるというものだ。
そして、しばらくクラゲを眺めていた俺は、入場ゲートで渡されたフロアマップに目を通してみたのだが、そこに表記されたほとんどの水槽がすでに活動停止していた。
「まぁこんなものだろう」と半ば諦めた気持ちで俺がクラゲブースを後にしようと振り返ると、たった一つだけ目に留まったものがあった。
いや、ものというよりもそれは生き物で、付け加えれば魚ではなかった。
怪奇現象だとさえ思った。
さっきまで俺一人しか見ていなかったはずの水槽の前に、黒髪の女性が一人佇んでいたのだ。
その真っ白なワンピースは純潔を表しているかのようだった。
一瞬見てはいけないものを見てしまったのかと、自分の目を疑ったが、何度見ても、小柄な彼女は背中を丸めて、小刻みに肩を揺らしながらそこに立っていた。
クラゲの光を吸収するその艶やかで健康的な長髪を見る限り、どうやら幽霊というわけではないらしい。
俺が恐る恐る近づいて様子を伺ってみると、彼女は食いしばるように顔を歪めていて、その大きな瞳からは、水玉と形容できるほど大粒の涙がこぼれ落ちていた。
そして、何よりも特筆すべきことに、俺には彼女の感情が色や形として見えていなかった。
単純に感情の起伏が少ない人間なのかもしれないとも思ったが、目の前で嗚咽するほど辛そうに泣いている女性が、そんな人間だとは到底考えられない。
俺は気になって声をかけてみることにした。
「あの」
声をかけた俺の存在に気がつくと、彼女は慌てた様子で目を擦り、まだ頬を伝った涙が乾き切らないうちに、赤くなった鼻尖をこちらに向けて一言「なんでしょう」と答えた。
もちろん俺は「あなたの感情が見えないのですけど」とは言えなかったので、とりあえず「大丈夫ですか」と当たり障りのない言葉を投げかけた。
すると彼女は自嘲するような声色で「いえ、大丈夫じゃないかもしれませんね」と答えた。
俺は経験上こういう状況では謙遜して「大丈夫です」と言うのがセオリーであると考えていたから、予想外の反応に戸惑っていた。
それに、彼女の裏側を読むことができなかったために、その“大丈夫じゃない“が本当に大丈夫じゃないから言っているのか、大丈夫だから冗談で言っているのかも判別できなかった。
したがって「ああ、そうですか」としか言えず、しばらく彼女と隣り合って無言でクラゲを見つめ続けることしかできなかった。
しかし、沈黙が15秒ほど続くと彼女はおもむろに口を開き、俺に「あなたはどうしたんですか」と聞いた。
俺は一見何ら気にかける要素のない自分に対してなぜそんなことを尋ねるのかと問い返したら、彼女は「あなたも辛そうだから」と言った。
俺はあまり自分の感情が表に出る方ではない、むしろ感情が薄い人間だと思っていたから、感情が視覚的に見えているわけでもないような人間に見透かされてしまったことに対して目を丸くした。
それに、現状に耐えきれなくなって、この水族館を訪れたのは事実だ。
そして彼女が「あなたも失恋ですか」と問いかけたので、俺は「まあそんなものですよ」と答えておいた。
どうやら彼女は付き合って3ヶ月の彼氏につい先ほどフラれてしまったようで、人生で初めての彼氏だったために、ショックを隠しきれず、大号泣してしまったのだという。
彼氏の言い分が「他に好きな人ができたから」だというのだから、尚のこと辛いのだろう。
そうなれば誰が悪いとかそれ以前に、圧倒的な劣等感を感じるのは彼女なのだから。
記憶がある範囲内の時間を人生だと定義するならば、俺は今、フラットな状態で他人と話すという人生で初めての経験をしている。
それがなんだか新鮮で、そこから一縷の希望を見出してしまった俺は、そのまま彼女と15分ほど話し続けた。
ただ、記憶喪失の俺が話せることはほとんどなかったため、「辛いですよね」「そうですね」とお互いの傷を舐め合うようなことしか言えなかった。
それから、10分ほど二人でクラゲを眺め続けていると、17時30分、営業時間終了のアナウンスが流れ始めた。
俺は元々人の流れが少ない時間帯を狙っていたのだから、1時間もしないうちに帰らなければならなかったことは承知していたのだが、初めて感情の見えない人間と話せたからなのか、心のどこかで妙な寂しさを覚えていた。
すると、彼女は一世代古い旧型のスマートフォンを取り出して「よければ連絡先を交換しませんか」と誘い出た。
俺は傷心に付け込んでその気にさせてしまったのだろうかと、生意気な思考を働かせたが、なんら苦痛を感じることなく人と会話ができたという充実感から、まんざらでもなかったため、素直に彼女の誘いに応じた。
名前は琴乃。
SNSのアイコンはありきたりなフリー素材の猫。
背景画像は彼氏と思われる人物との見切れたツーショット写真だった。
しかし、俺はここから違和感を覚え始める。
俺たちが出口へと向かっている間に「そういえば、この水族館もうすぐ閉館するんですよね」と話すと、彼女は「そうなんですか」と知らないような口ぶりだった。
あそこまで悪目立ちするほどの貼り紙に気づかない人間がいるものなのだろうかと、不審に思ったが、水族館に入るまではまだ別れる前だった彼氏のことで頭がいっぱいだったに違いない。
そして、俺たちが出口の前に立つと、館内の青白い光と、屋外の夕暮れがコントラストを描き出し、その境目を明確にしていた。
自動ドアが開くと、俺はその境界線を跨いで彼女よりも数歩先に出ると、突然、奇妙な静けさに襲われた。
俺がどうしたものかと後ろを振り返ってみると、琴乃さんが姿を消していたのだ。
思わず声を漏らして動揺し、辺りを見回すが、彼女はどこにも見当たらず、その影すら残っていなかった。
しばらく彼女の名前を呼び続けたが、それでも姿を見せる気配は全くなかった。
頭上にいくつもの疑問符を浮かばせながら、考えを巡らせたが、いつまで経っても彼女が突然消えた理由は分からなかった。
もしも彼女が水族館に何らかの未練を残した幽霊だったならば、あんなにも血色がよく、魅力的な風貌をしているものだろうかという疑念が生じる。
それに、何の音沙汰もないにしろ、SNSを確認すると確かに彼女の連絡先は登録されている。
一体彼女は何者だったのだ。
俺は出口の前で長い間立ち尽くしたが、結局真相は分からず終い。
俺は帰宅することにした。
◆◆◆
翌日目を覚ますと、なんだか懐かしい香りがした。
潮の匂い。
帰宅してから脱ぎっぱなしにしていたジャケットの方からだ。
昨日の水族館が海に面した立地に建造されていたからだろうか。
それにしても、なぜ俺はこの香りを懐かしく思ったのだろう。
琴乃さんからの連絡はない。
時刻は11時45分。随分と怠惰な起床時間だが、いかんせん俺には大量の時間が余っているため、目を開けていても何かやれることがあるわけでもなかった。
小説や漫画といった読み物であれば、人の感情を気にすることなく暇を潰せるのだが、この1ヶ月ちょっとで全て飽きるほどに読み尽くしてしまったのだ。
それに、ネットサーフィンという手もあるが、インターネットは悪意や憎悪の温床であるために、これに手を出すのは億劫だと感じてしまう。
「さて、どうしようか」と今日も頭を悩ませていると、昨日の出来事で味を占めた俺は、もう一度水族館に行ってみてはどうだろうかという考えに至った。
あの水族館は展開規模が小さいこともあり、メジャーな水族館と比較して入館料がひと回りもふた回りも安くなっているため、収入源が限られた俺にとっても大した痛手にはならないというところも大きかった。
そういえば、随分前にも同じような理由であの水族館を訪れた気がするのが、これは何だろう。デジャヴというやつだろうか。
昨日の記憶にしてはやけに遠く、霞んでいて、ひどく不鮮明だ。
むしろ懐かしいという表現の方が適切かもしれない。俺の知らない過去と何か関係があるのだろうか。
今朝の潮の香りといい、どうしても違和感を拭いきれないが、一人思索に耽って堂々巡りしていても仕方がないため、俺はさっさと身支度を済ませて家を出ることにした。
今日は少しだけ余裕をもって鑑賞しよう。
◆◆◆
水族館へ辿り着くまでの道のりで、俺は何度か見覚えのある景色に遭遇した。見覚えがあるといっても、昨日は感じることのなかった既視感だ。
これもなぜだか、何年も前の失った記憶と、どこか重なっているような気がしてならなかった。
そして、それらの景色のほとんどは昨日と様相が異なっていたのだ。
例えば交差点の信号機や、舗道に立ち並んだ飲食店など、今現在そこに存在している人間や過去の誰かしらが関与したと思われる工作物、建造物から、そこにあるべき感情に加えて、何か極めて個人的な情性が顕れているような気がした。
それも、とても親近感が湧くような色で。
見る景色全てが、朧げに何かを伝えようとしているような、そんな感覚だった。
そして、俺はまた水族館の入館ゲートで年老いたスタッフを一瞥すると、ゆっくり時間をかけて展示されている魚に目を通し、もう一度クラゲブースへと足を運んだ。
やはり、館内もぼんやりと懐かしい色で溢れていた。
俺がしばらくクラゲを眺め続けていると、今日は親子とカップルが1組ずつやって来た。もちろん4人とも感情が見えている。
子どもの快活で溌剌はつらつとした輝きも、彼氏の薄汚い下心も、はっきりと可視化されている。
俺は彼らが退場するのを見計らって、後を追う形でその場を去ろうとした。
しかし、途端、背後に何者かの気配があることに気がつく。
この気配は感情の色ではなかったのだが、なぜかそれに似た性質を感じ取った。
俺はもしかしてと振り返ってみると、そこには見覚えのある、真っ赤に目を腫らして泣きじゃくる琴乃さんの姿があった。
時刻は昨日と同じ頃。
一体どこから現れたのか。
真相を確かめるべく、俺は彼女に声をかけた。
「こんにちは」
「え……」
彼女は昨日と同様に、両腕で隠すように目を擦り、パッと俺の方に向き直った。すると彼女は「何か御用ですか」と他人行儀に問いかけた。
「えっと……琴乃さん、ですよね」
「え、そうですけど……どうして私のことを?」
どうやら俺とは全く面識がないような様子。俺はまた頭を抱えた。
「昨日お会いしましたよね」と言い返すと、キョトンとした顔で「いえ、初対面ですが」と返答した。
一体どういうことなのだ。
俺は再びSNSの連絡先を確認してみたが、やはりそこには琴乃さんの名前がしっかりと刻まれていた。
俺がそれを彼女に伝えると「おかしいですね。どこかでお会いしましたっけ」と何ら心当たりがないような、無垢な表情を浮かべていた。
それから昨日の出来事の一部始終を彼女に話したが、やはり腑に落ちていないようで、いつまでも人違いではないかと疑っていた。「そんなはずはない」と何度も主張したが、立証できるものがSNSの連絡先しかなかったために、不審がられる一方で、信じてもらうことはできなかった。
そうして俺が一人空回っていると、次第に彼女の方が正しいのではないかと思い始め、結局俺は一度話題を変えた。
「彼氏さんはどんな人だったんですか」
「どんな人……と言われるとよく分かりませんが、私に初めて好きと言ってくれた人で、何年先も愛してると誓ってくれた人です」
「でも別れたと」
「そうなんですよ……それが一番分からなくて……男なんてみんなそんなもんなんですかね」
「まあそうかもしれませんね」
一度経験している会話だったため、何の滞りもなく進めることができた。
俺は「あなたもそういう男なんですか」と問われたので「付き合ってみないと分からないですね」と答えると、ナンパだと思われてしまった。
しかし、唯一純粋に心を通わすことができる相手ではあるので、謎は残されているが、それとは別に彼女に対して何か期待していたのは確かである。
そして、俺たちがまた他愛もない話を繰り返していると、思っていたよりもすぐに営業時間終了のアナウンスが響き渡り、その音が寂しさの中に一欠片の喜びを内包していたことに気がついた。
俺は彼女を連れて出口に向かうと、「今日は見逃さないぞ」と決心した。
5分とかからない通路を抜けて、出口の自動ドアの前に立つ。
俺は彼女に「お先にどうぞ」と言って、先導を促すと、彼女は「はい」とだけ呟いて境界線を跨いだ。
先導してもらえば、例え行方を晦くらまそうが、少なくとも決定的な瞬間を見逃すことはない。
しかし、突然狙ったかのように夕暮れの日差しが俺の両眼を突き刺し、視界が真っ白になった。
何も見えない。
そして、俺が一歩後退ると、前を歩く彼女の後ろ姿は眩い光の中へと吸い込まれていった。
狼狽えた俺は思わず瞼を閉じてしまったが、再び開くともうすでに彼女の気配は完全に消え失せていた。
辺りを見回してもどこにもいない。
「しまった」と俺は彼女の連絡先に電話をかけてみたが、相変わらず繋がることはなかった。
結局のところ、後でも先でも彼女の正体を掴むことはできなかったのだ。
俺は悩みに悩んだが、なぜ彼女は外に出ると消えてしまうのか、なぜ昨日会ったにも関わらず初対面なのか、なぜ感情が見えないのか、どの謎に対しても明確な答えを出せないままでいた。
しかし一つだけ、俺は医者が言っていたことを思い出していた。
「共感覚は記憶を助ける」ということ。つまり、明確に記憶しづらい物事を色や形といった印象として覚えてしまうということだ。
そして、俺は今日見た風景の色は、俺が記憶を失う前、無意識のうちに覚えたイメージが鋭くなった共感覚によってより分かりやすく具現化されたものなのではないかという気がしていた。
そうなると、俺はあの寂れた水族館にも以前訪れたことがあるということになる。
だから懐かしいと感じていた。
しかし、その引き金を引いたのは一体何だったのか、それが心の奥で引っかかったままの状態でいる。
というよりも、俺の心がそれを暴かれまいと蓋をしているような感覚。
それに、そこに琴乃さんの正体に関して核心に迫る何かがあると思えてならなかった。
胸の内が妙にざわつく。
知らない記憶の断片が、俺の中で右往左往している。
俺は考え込むと少し気分が悪くなったので、足早に帰ることにした。
◆◆◆
帰宅すると、俺は想像以上に疲労していることに気がついた。
息が上がっている。
動悸も早い。
胃に不快感がある。
何より頭が痛い。
琴乃さんに出会ってからというもの、どこか拭いきれない不安が頭の中を巡っていた。
何か、大切なことを忘れている。
漠然とそんな思考に取り憑かれて、悶々としていた。
何をしていても落ち着かない俺は、自分を鎮めるように、もう一度SNSを見て琴乃さんの存在を確認したが、当然何も変わったことなどなかった。
『琴乃』という名前の左にある丸枠のアイコンの上に猫の写真が載っている。ただそれだけ。
しかし、スマホの電源を切ろうとしたその時、ある一つの考えが脳裏をよぎった。
琴乃さんのSNSに設定された背景画像。
顔が見切れた彼氏とのツーショット写真だったと思うのだが、もし彼女がその男にフラれた日付が今日ではなく昨日だったならば、とっくに他の写真とすり替えられているはずだ。
また、すり替えられていたならば、やはり俺は今日彼女と初対面ではなかったということが立証される。
ようやく視界が開けた。
俺はこれでほんの少し前に進めるかもしれないと期待して、彼女のアイコンをタップし、ホーム画面を開いた。
ところが、画面に表示されたのは昨日と何ら変わりない例のツーショット写真だった。
小柄な琴乃さんの背丈に合わない彼氏の顔が画面上部で見切れている、あの写真。
つまり、これによって俺が昨日も彼女と話していたという事実は客観的に証明することができなくなったのだ。
しかし、俺はそんなことなどどうでもいいと思えるほどに、たった一つ、決定的な真実に直面することとなった。
「……俺だ」
そう。
その写真に映る彼氏と思しき人物は、紛れもなく俺自身だったのだ。
今日1日を通して累積した記憶の欠片がそう訴えていた。
そして、一瞬脳天を撃ち抜かれたような衝撃が走り、俺は全てを思い出した。
彼女、
俺が彼女に出会ったのは7年前。あの水族館だった。
安上がりで費用がかからないからと前の彼女を連れて行った俺は、そこで盛大にフラれ、途方に暮れていたところ、クラゲ水槽の前で似たような境遇に置かれた琴乃と出会い、意気投合し、連絡先を交換した。
それから俺たちは2、3年の交際期間を経て、「これから先もきっと」と考えた俺は、初めて彼女と出会った水族館でプロポーズを計画していたのだ。
しかし、その1週間前、俺たちは旅行の帰りに土砂崩れに巻き込まれ、そのまま散り散りになった。
それから生存した俺は記憶を失い、異常な共感覚を身につけ、今に至るという経緯だ。
そして、全てを思い出した俺が“初対面の彼女”の正体に辿り着くまでに、2秒とかからなかった。
あれは、共感覚が生み出した思い出の幻影だったのだ。
印象強く俺の記憶に刻まれた、俺と琴乃が初対面だったあの頃の時間が、水族館の景色と共に、共感覚を通して顕在化したのだ。
だから、彼女は俺の感情や記憶そのもので、彼女の周囲に彼女自身の感情が見えなかったのは当然のことだった。
じゃあ、本物の琴乃は。
それを想像して、冷や汗が出た。
吐き気がする。
俺が目を覚ましたのは事故から1年後。
その時点で琴乃は行方不明だった。
琴乃の背景画像は今も事故当時のまま。
事故以降、俺に何も伝えずに初対面の頃から使用していたアドレスを変えたとも考えにくい。
つまり、状況は絶望的だと言える。
「そんな」
目眩がする。
俺はひどく後悔した。
彼女が辛い思いをしている間、病院のベッドでのうのうと寝ていたことを。
この数年間、彼女のことを思い出さなかったことを。
それをたった今思い出したことを。
そして、他人の感情に気圧されて、部屋に閉じこもっていたことを。
事故からは4年以上経過した。
何もかもが遅すぎた。
俺は壊れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
もう琴乃とは会えない。
水族館にいるのは俺の記憶で、この世で生きている本物の琴乃じゃない。
堪えきれず、涙が溢れ出た。
全身から力が抜けていく。
壁に頭をぶつけた。
電話をかけても、メールを送っても、彼女からの返事は来ない。
無力感と罪悪感に苛まれる。
頭の痛みなど気にならない。
俺はもう会えない彼女のために何ができるのか、それを考えなくてはならない。
だが、今の俺が何か彼女にしてやれることがあるとは到底思えなかった。
◆◆◆
あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。
気づけば夜が明けていた。
カーテンの隙間から覗く朝日が眩しい。
乾いた涙を光が照らす。
この一夜を通して、俺は一つだけ自分がやれることを考え浮かべていた。
正直これが最善だとは思えないが、今は足を動かさなければならない。
その考えとは、俺がもう一度水族館を訪れ、あそこにいる琴乃に、本物の琴乃に渡せなかった婚約指輪を渡すということ、彼女に果たせなかったプロポーズをするということだ。
もちろん、そんなことをしたって本物の琴乃は帰ってこない。
俺の自己満足にしかならないのかもしれない。
しかし、例えそうだとしても、このまま塞ぎ込んでいては、誰も報われないだろう。
そんなことを、きっと琴乃は望まない。
何よりも、俺はこの指輪にただ悲しいだけの感情をもたらしたくはなかった。
彼女のことを思い出すたびに、指輪を見るたびに、冷たく沈んだ寒色が滲み出る、大切な指輪をそんなものの象徴にしたくなかったのだ。
せめて、これだけは、俺たちの幸せを象徴するものであってほしい。
だから俺はもう一度、“初対面の彼女”に会いに行くと決めた。
脱ぎ散らかしたジャケットからは、潮の香りがする。
時刻は8時。
水族館の開館時刻は9時。
閉館のお知らせに記載されていた日付は明日に迫っている。
急がなければ。
俺はできるだけプロポーズに相応しいように身なりを整えると、慌ただしく玄関を飛び出した。
◆◆◆
水族館に着くと、俺は全てを置き去りにしてクラゲブースへと直行した。
しかし、昨日、一昨日同様に、そこへ足を踏み入れたからといって、瞬時に琴乃が現れるわけではなかった。
恐らく、待つ必要があったようだ。
俺が彼女との思い出を最も強く感じ取る、営業時間ぎりぎりのあの時間まで。
条件が揃った時、きっと俺の心は彼女を呼び起こすのだろう。
なぜなら共感覚とは無意識に起こるもので、俺がいくら望もうとも、都合の良いように操ることはできないからだ。
「はぁ……」
俺は張り詰めていた緊張を外に流すように、大きなため息を吐いた。
まだ、焦る必要はない。
それから、一度目の前のクラゲを冷静に眺めてみた。
クラゲの数自体は、やはり豊富だとは言えない。
しかし、青、緑、紫、色彩豊かなクラゲが、ぼんやりと光を放ち、薄暗い部屋に天然の明かりを灯していた。
やはりどの色にも淀みがなくて、一見すると不気味な部屋だが、神秘的とさえ思われる風情があった。
思えば、俺が今まで見てきた感情にも、こんな色、形があったのかもしれない。
全部が全部攻撃的なわけではなかったのだ。
きっと、それには俺自身の偏見や先入観も働いていて、心の持ち用次第で、ある程度は見方を変えられたのだろう。
そうして妙な安心感に包まれた俺は、近くの長椅子に腰掛けると、一睡もしていなかったからなのか、目を瞑って考えごとをする間もなく、眠りについてしまった。
◆◆◆
ふと目が覚めた。
まるで狙い澄ましたかのように。
辺りに客はいないが、スタッフが一人、中央の柱から心配そうに俺を覗いていたので、会釈した。
それから目を擦り、両手で頬を叩き覚醒すると、真っ直ぐ立ち上がって、もう一度クラゲ水槽と向かい合った。
腕時計を見る。
そろそろ時間だ。
服装は大丈夫だろうか。
ほつれているところなどないだろうか。
もう少し皺などを小綺麗に整えておくべきだっただろうか。
そんなことを考えていると、周囲が薄く色づき始めていることに気がついた。
来る。
そう思った。
そして、俺が一つ深呼吸をすると、隣に気配を感じた。
真っ白なワンピースの、黒髪の小柄な女性。
瞳は大きく、そこから宝石の粒とも言えるような、美しい涙がこぼれ落ちている。
肩は小刻みに揺れていて、顔はくしゃくしゃになっているけど、それがなんだか愛らしく思える。
そんな女性。
俺は声をかけた。
「あの」
初対面の彼女には感情が見えない。
だから、できるだけ誠実に。
「……え」
驚いた彼女は腕で両目を覆い、頬の途中が濡れたまま、俺を見上げると一言「なんでしょう」と尋ねた。
「辛そうですね」
というと、彼女は「あなたも辛そうですね」と返した。
「失恋でもしましたか」
と聞かれたので、「はい、そんなものですよ」と答えた。
「辛いですよね」
と再度問われたので「ええ、とても」と返した。
それから俺の恋人はどんな人だったのかと聞かれたので、俺は「あなたみたいな人でしたよ」と答えた。
そして――
「プロポーズをする予定だったんです」
と告白すると、彼女は「まあ」といった様子で指先を口元に添えて目を輝かせた。
俺が「でも指輪を持て余してしまったんですよね」というと、「それじゃあどうするんですか」と言われた。
それに対して俺が「一つ提案があるんです」というと、彼女は首を傾げた。
俺は一度深く頷いて、顔を見上げた。
「これを、あなたに」
そうして俺は彼女に指輪を差し出した。
0.15カラットのダイヤモンドが施された、ストレートラインのエンゲージリング。
繊細な輝きだが、薄暗い館内では一際強く煌めいている。
当然、彼女は当惑した。
「どうして私に?」と。
だから俺はこう答えた。
「言ったでしょう。俺の恋人はあなたみたいな人だと。正確に言えばもう少し未来のあなたではありますが」
やはり彼女は状況が飲み込めていない様子で、人差し指をこめかみ辺りに当てながら、眉を顰ひそめていた。
「それに、俺はこの指輪に寂しい思いをしてほしくないんですよ」
俺がそういうと、彼女は俺が差し出した指輪をもう一度凝視した。
すると、何かを悟ったような顔で一歩引き下がると、俺を見上げて言った。
「これ……」
「ん?」
「指輪の、内側」
「……ああ、これ。ほんと、不思議なこともあるものですよね」
「ええ、不思議です……」
「……」
「……」
「……」
「その……私が似ているのって、見た目だけなんですか?」
「……さあ、どうでしょう」
俺は少し濁して、そう答えた。
それから再度指輪に視線を落とすと、しっかりと彼女の瞳を見据えて言った。
「これを、受け取っていただけますか」
声色に力がこもっていた。
思わず指先が強張る。
初対面の彼女はまだ不信感を払拭しきれていないようだったが、どこか葛藤するように胸の前で両手を組んで、ぎゅっと握りしめると、深く息を吸って、目を閉じ、ゆっくりと俺の眼差しを受けて、口を開いた。
「はい、私でよければ」
その言葉を受け取った瞬間、俺たちを包み込む世界の色は、波紋が広がるように、光のグラデーションを描き出した。
黄色、橙色、桃色、緑色、優しく柔らかな色彩が円形に滲んでいく。
そして、俺が彼女の左手の薬指に指輪をはめると、少しだけ目に見える形が変化し始めていることに気がついた。
「琴乃……」
彼女の表情は、微かに俺の恋人である琴乃の様相を呈していたのだ。
「どうして今」と思ったが、これは、この指輪と思い出の水族館、そして琴乃の全てが揃った時に連想される、俺の潜在意識に内在するイメージなのかもしれない。
未来ではきっとこうなっていたはずだ、という俺の期待が具現化した姿。
それが、今俺の目の前にいる海凪琴乃。
幸せそうに微笑んでいる。
そんな琴乃を見ていると、昨日枯れるほど流したはずの涙が、星のように瞬いた。
それを見て彼女が笑う。
「そんなに嬉しかったの?」
俺は震える声で彼女に伝える。
「ああ、嬉しいよ。本当に」
それを聞いた彼女が、また笑みをこぼす。
「ふふっ、ならよかった」
そんな光景が、たまらなく幸せで、こんな時間がずっと続けばいいのにと思った。
しかし、時は俺たちを待ってくれたりはしない。
営業時間終了のアナウンスが流れ始めた。
周囲の色がだんだんと薄れていく。
しばらくもしないうちに、幸せの色の向こうにクラゲが見えた。
輝きは全て琴乃の薬指へと吸い込まれていった。
夢の時間が終わりを告げる。
「
最後に彼女が俺の名前を呼ぶ。
「これから先もきっと、私たち幸せだよね」
一点の曇りもない笑顔で、俺の瞳を覗く。
だから、俺は誓った。
「ああ俺たちは幸せだ。ずっと幸せでいるよ」
もう、感情から逃げたりはしない。
――そうして、俺たちは水族館を後にした。
◆◆◆
翌日、俺は数ヶ月ぶりにインターネットを使った。
琴乃の安否を調べるためだ。
しかし当然、出てきた結果は望ましいものではなかった。
事故からほんのわずかな期間で捜索は打ち切られてしまっていたのだ。
「だよな」と呟いた俺は多分、思っていたよりもショックを受けていたと思う。
だが、俺は幸せでなくてはならない。
もう感情を呪わない。
卑屈にならないで、前を向くのだと、誓ったから。
俺はそれを確かめるように目を瞑ると、立ち上がって歩き出した。
今日はあの水族館の閉館日。
俺は朝早くから指輪を取りに行くことに決めていた。
いつまでも、琴乃のことを忘れないように。
往路には、俺たちの幸せな感情が溢れていた。
二人でクレープを食べに行った日のことも。
服を買いに行ったことも。
初めて手を繋いだ日のことも。
全部、覚えていたから。
見るもの全てに、俺の琴乃に対する思いが投影されて見えた。
そして、今日もまた寂れた水族館に来た。
閉館日だからなのか、いつにも増して客入りが増えている。
正直、少し怖気付いたが、冷静になって彼らを観察してみた。
みな前向きな気持ちで満ち溢れている。
どうして今まで気づかなかったんだろうと思った。
それから俺は入館ゲートで感慨深そうに館内をじっと見ている年老いたスタッフに声をかけて尋ねた。
「あの、昨日クラゲ水槽の辺りに指輪が落ちていませんでしたか。小さいけど、ダイヤモンドが付いているやつです」
すると、彼の返した一言は意外なものだった。
「いや、まったく」
少し、戸惑った。
あの指輪がもうどこかへ消えてしまったと思ったからだ。
もしかすると、営業終了間近のあの時間、誰かに盗まれた可能性もある。
俺は平静を保つのに必死になった。
あの指輪は幸せの象徴だから、これから先俺たちが幸せであることを証明するものだから、誰かに穢されてほしくない。
そんな思いでいっぱいいっぱいになっていたのだ。
ところが、突然、俺の携帯に一本の電話がかかってきた。
バイブレーションに思わず飛び跳ねた俺は、一度胸の鼓動を落ち着けると、画面を確認した。
発信者の名前は『琴乃』と表示されている。
俺は「えっ」と声を漏らし、慌てて応答した。
しかし、声の主は全くの別人だった。
「あの、心湊さんですよね」
聞き覚えのある声だった。
「琴乃の母です」
電話の主は琴乃の母親だった。
俺が「どうして」と聞くと、彼女は言った。
「あの事故が起こった近辺で、先日交通整備が行われていたのですが、そこから少しだけ、琴乃の遺品が見つかったんです」
遺品。俺は一瞬その言葉に狼狽しかけたが、気を強く持って、問いかけた。
「どんなものが、見つかったんですか」
続いて彼女は、一つ一つゆっくりと、噛み締めるように列挙していった。
「……そうですね。まず、今かけているこの携帯が見つかりました」
「……はい」
「それで、次にあの子の免許証などが見つかって……」
「……はい」
「その他にもあの子が身につけていたものがあって……」
「……」
「……それから、婚約指輪のようなものが見つかったんです」
「……え」
俺は自分の耳を疑った。
婚約指輪。なぜあれが事故現場に。
俺はもう一度聞き返してみたが、やはり婚約指輪で間違いないようだ。
内側には、俺たちの名前が刻印されているという。
俺が「どうしてそんなところに」と聞いても明確な答えは返ってこなかった。
そして、琴乃の母親は、それを俺に受け取ってもらいたいという旨の提案をし、一度電話を切ると、俺の携帯に一枚の写真が送信された。
俺は一目見て確信した。
それは紛れもなくあの指輪。
俺が水族館で琴乃に差し出したあの婚約指輪だった。
何より、その写真を見た時俺は、昨日見たあの幸せな輝きを感じ取ったのだ。
色彩豊かで優しい、あの煌めきを。
初対面じゃない彼女の感情がぼんやりと滲んでいた。
俺はまたその場に泣き崩れてうずくまった。
みっともなく、しゃくりあげながら。
「琴乃」
でも、これは悲しい涙じゃない。
地面にこぼれ落ちた涙の跡を見て、そう思った。
それから、俺は彼女と約束したことを頭の中で何度も唱えた。
これは呪いじゃない。
祝福だ。
そうして、腫れた目をこすって口角を上げると、俺は再び立ち上がった。
周囲は誰のものとも言えない感情の色で溢れかえっている。
もちろん全てが幸せな感情とは限らない。
まだ目をそむけたくなるような色だって浮かんで見える。
しかし、俺はそれから逃げ出してはならない。
この指輪に誓って、もう迷わないと決めたから。
俺と琴乃の幸せを祈って、この先の人生を歩み続ける。
――前に進もう。
俺はもう一度固く、強く決心すると、一歩足を踏み出した。
彼女のいない未来では、きっと色々な困難が待ち受けている。
だけど、いつだって俺の中には、彼女からもらった大切な感情があるから。
きっと、大丈夫。
初対面の彼女には感情が見えない リウクス @PoteRiukusu
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