第4話 悪夢だぁ!
私は幻を見ているのだろうか?いや、白昼夢に違いない。かなり悪夢寄りの。
学園の入学式当日。この学園では乙女ゲームお決まりの「学園では身分は関係ない。みな平等であるべし」と言うお偉いさんの言葉により貴族ならば高位だろうが末席スレスレだろうが、はたまた金髪碧眼の王子だろうが門をくぐればみな平等なのである。
つまり、男爵令嬢が王子に気軽に挨拶をしても許されると言うとんでもシステムが採用されているのだ。
だから普段だったらまともにお目にかかれない王子にも貴族令嬢たちがアタックチャンス満載な訳ですよ。そりゃワンチャンあるかもって群がるよね。
合言葉は「婚約者がいたって関係ないじゃない、だって王子を射止めれば玉の輿だもの!」だ。皆さん肉食系ですなー。いや、倫理的に問題あるから。略奪ハンターか。
よーし、それを踏まえた上で〈甘恋〉の勉強をしようか!ここは試験に出るよー!メモの準備だぞ☆
まずヒロインは朝、遅刻しそうになり朝御飯を口に放り込みながら屋敷を出る。
まずその時点で貴族令嬢としておかしいのだがなんたって甘やかされているので誰もツッコミなんかしない。男爵家に唯一いる使用人も今さらツッコミなんかしない。さらに走った方が早いからと馬車を使わずに学園まで突っ走るのだが、角を曲がる時に攻略対象者とぶつかってしまうのだ。
ちなみに攻略対象者は3人。ラインナップは王子(同学年)、生徒会長(ひとつ先輩)、教師(大人)だ。この時の口にもぐもぐしている朝御飯の種類によって出会う人物が変わる。
ミートソースパスタ→王子
ビーフシチュー→生徒会長
カレーライス→教師
いや、どれも遅刻しそうな時に走りながら食べるもんじゃねぇだろ。せめて食パンにしとけよ。
ゲームしてたときって大概徹夜明けでハイになってたから気にならなかったけど、走りながら皿とスプーンでカレーライス食べてるヒロインってどーなんだろ。
まぁそんな感じでヒロインは攻略対象者とぶつかり最初のイベントとなる。この時に攻略対象者たちはヒロインに一目惚れするのだが、全員が「……この子は天使か?」と呟くのだ。
ヒロインは確かに可愛い。
オレンジゴールドのふわふわの髪に同じくオレンジ色の大きな瞳。肌はすべすべだし、きょとんとした顔で首を傾げる姿は確かに可愛い。あざと可愛い。
そう、可愛いと思っていた。……ゲームをプレイをしていた頃は確かに可愛いと思っていた。可愛いくてテンション爆上がった事もあった。だがーーーー。
「ココ~!会いたかったよー!」
筆頭攻略対象者で私の婚約者、ハインリヒト殿下が校舎の方から笑顔でこちらに走ってきているのだが……その左足には頭からミートソースパスタを被った謎の生き物……いや、ヒロインが「い~やぁ~っ?!」とすごい形相で叫びながら必死に掴まって引きずられている姿を見てしまったらなんか萎えた。
そしてミートソースパスタと言うことはやはり王子ルートか……。
やっぱり悪夢だ!
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