依存症の雨の過ごし方

日々人

依存症の雨の過ごし方

日曜日の朝は、なぜに目覚めた瞬間に休みだと理解できるのだろう。

あぁ、煩わしい。頭痛がする。

一本だけ蓋の開いていない缶がリビングの脇に転がっている。

そうだ。

飲み口を開けず、そのまま口元に持っていって歯をぶつけた。

酔っ払いを鼻で笑い、まぁでも、これくらいの量ならばアルコール依存症ではあるまい、などと思ってからの記憶がない。


昨晩なのか早朝なのか。

大して省みることもなく、散らかった空き缶を跨いでカーテンを開けてみる。

外は雨降りだった。

アプリで今日の天気を確認してみれば、とりあえず夕方くらいまでは降り続けるようだったので安心した。

暇だとはいえ、傘をさすのがめんどうくさくてパチンコ店に行こうという気になれない、という理由を頭の中に思い浮かべてみるが、そんな嘘はよしなさいという声がした。

ところで、胃が気持ち悪いが喉は乾いている。とりあえず何か喉を通したい。

ギャンブル依存症の為の更生プログラムに身を寄せているオレは、そんなジャンジャカ騒がしい店の前に行くことは当然許されない、と思っている。

で、いいんだよな?


自制を続けられる自信など全くない。

食器を洗い終わった後、コーヒーを入れてから窓辺に近寄る。

最近になって買い集めている、原産地が海外、そんな観葉植物が雨に打たれている。

部屋で育てていたはずなのに、いつの間にかベランダに並んでいる。

今日は水をやらなくても良さそうだ。

二日酔いにはコーヒーが良い、と昔付き合っていた恋人から聞いたのはいつの話だったか。

「なんだって他人の話をすぐ信用して、なんだって他人の勧めに飛びつくのよね、アナタって」

時々、その台詞を思い出すが、そういう他人に依存するのも何やら医学的な名称があるものなのだろうか。


それにしても大して効果を感じられない。

ん?コーヒーのことだ。

むしろコーヒーを飲んでからの方がズキズキと痛む事だってある。

そういえばカフェイン依存症っていうのもあるんだよなと、ベランダに並んだ緑に向かって呟いてみる。


緑は昔付き合っていた恋人の名前だ。


ガラス越しの緑は返事を返さない。


緑は茂らせた数多の葉を震わせ、雨粒をパチパチと弾き飛ばしていく。

パチンコの玉だ。あれは。

乾いていた土に吸い込まれていく。

嗚呼、ムズムズする。

こんな日はどうしたらいいんだ。

誰か教えてはくれないか。


 ー ー ー ー



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

依存症の雨の過ごし方 日々人 @fudepen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ