side優子①

「姉ちゃん、昔からずっと好きだったんだ!俺と付き合ってください!!」


 そう言いながら、顔を真っ赤にしたリョー君が頭を下げる。確かに今日はちょっと挙動不審だったし、いきなり公園に寄っていこうなんて言うから何となくは予想していた。それでもまさか、という気持ちが強い。まさかアタシなんかにって。


 当然嬉しくないなんて事は無い。すぐにでも頷きたくなるくらいだ。けど、それは駄目だと思う。リョー君にはアタシなんかじゃなく、もっと素敵な人がいるはずだ。


「あっははー、気持ちは嬉しいんだけどね。リョー君ならもっとヒロインみたいな人じゃないと釣り合いとれないっしょ」


 だから、この気持ちは胸にしまう。その代わりに笑顔を浮かべ、断りの返事を返す。……上手く笑えていると良いけど。

 その返事を理解したリョー君の悲しそうな顔を見ていられなくて、そのまま急いで家に帰った。


「ただいま……」


「お帰りなさい、どうしたのそんな落ち込んで」


「何でもないよ、部屋にいるね」


 お母さんに心配されたけど、言う訳にもないので適当に返事を返し部屋に入る。そのまま着替えるのも忘れ、ベッドにポスンと音を立てて倒れこんだ。


「なんでアタシはヒロインじゃないんだろう……」


 思わずそんな言葉がもれてしまう。昔からずっと思っていることだ。


 七花はとんでもない美人だし、髪もとても艶があって美しい、勉強も常に1位だし、スタイルなんてそこらのモデルよりも綺麗だ。


 リョー君も本人は謙遜するけど昔からずっと格好いい顔をしてたし、好きな人に追い付くためにと勉強も運動も頑張っていて、今では文武両道って言葉が似あう人になっている。


 それに比べ、アタシはどれもそこそこ程度だ。順位で言えば3位くらい。別に悪くはないけど、目立つような事も無い。そんな人間がぶっちぎり1位みたいな人達と一緒に居るのだ。


 昔からずっと、「2人の邪魔をするな」、「一緒に居て恥ずかしくないのか」、「付き纏ったら可哀想だ」、「まるで召使いみたいだ」なんて言われ続けてきた。


 その言葉たちは自分が脇役だと、引き立て役なんだと思うには十分だった。


「あーあ、ヒロインだったら今頃リョー君とイチャイチャ出来たのかな」


 なんて、自嘲気味に呟いて枕に顔を押し付けた。明日は笑うから、今日くらいは泣かせて欲しかった。

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